大阪の老舗製薬企業、塩野義製薬が新中期経営計画で、「HaaS(ハース、ヘルスケア・アズ・ア・サービス)」を提唱した。高脂血症治療薬やエイズ治療薬で大型製品を生み出してきた「創薬力」に自信を持つ同社があえて異業種とパートナーを組み、サービス業の要素を取り入れていく真意は?(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

自動車業界の「MaaS」の向こうを張り
製薬業界で「HaaS」を提唱

塩野義製薬の本社
Photo by Masataka Tsuchimoto

「モビリティではないですけれども、サービス業の要素も入れていかないと、とても勝てない」

 大阪の老舗中堅製薬企業、塩野義製薬が6月上旬に開いた新中期経営計画説明会。手代木功社長はそう語り、同社の2030年に向けた新たな方向性として「HaaS(ハース、ヘルスケア・アズ・ア・サービス)」を提唱した。

 どこかで聞き及んだフレーズ。そう、100年に1度の変革期が訪れている自動車業界で近年盛んに使われている「MaaS(マース、モビリティ・アズ・ア・サービス)」の向こうを張ったフレーズである。マースとはサービスとしての移動手段を指す。ひるがえって塩野義製薬がハースを提唱する狙いは、従来型のメーカーの枠にとどまらず、「ヘルスケア全体をサービス業として捉え、価値提供する製薬企業」への変革にある。

 塩野義製薬をおさらいしておくと、感染症分野に強みがあり、大型製品に育ったHIV(エイズ)治療薬の海外ロイヤルティー収入が貢献して、近年は業績好調だ。

 最近は新機軸のインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」を上市して話題をさらい、コロナショックを受けては治療薬とワクチンを同時に開発中。近年の自社創薬比率60%以上という高い数字からも分かるように、新薬を生み出す力に自信を持つ企業だ。

 4期連続の過去最高益こそ逃したものの、2020年3月期は売上高3349億円、営業利益1252億円、純利益1212億円。相変わらず業界でトップクラスの高収益体質だ。