美容医療#3Photo by Yoshihisa Wada

特集『美容医療 美は金で買える』(全8回)の#3は、「プチ整形」の商品化など、美容医療業界を開拓してきた高須クリニックの高須克弥院長を直撃。高須氏は新型コロナウイルスが引き起こす「美容バブル崩壊」を予言するとともに、アンダーグラウンドな美容医療業界の問題点を斬る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)

美容医療業界は
「立派な吹きだまり」

──美容医療の開拓者として、現状をどう見ていますか。

 医療は一般的に病気になった人を助けるもの。そして美容医療は、医師免許が必要にもかかわらず、裏稼業のように思われてきた。私が開業した1970年代、都内に美容外科は10軒くらいしかなかった。あとは闇(医者)。ラブホテル街の中にあり、「処女膜を作る」などといった卑しい商売だったんですよ。

 当時私が美容をやると宣言したら、親戚のおじさんたちが集まってきて「われわれ一族の恥さらしになる。何かあったら縁を切る」と説教されました。

 業界の運動が実を結び、(78年の医療法改正で)「美容外科」を標榜診療科名*にしてもらえ、やっと医者の仲間に入ったのです。

 でも今度は、公的なお金を使う医療の原資が小さくなっていった。そして、医者の逃げ場は自由診療しかなかった。美容医療は全部自由診療だから、皮膚科医や形成外科医、泌尿器科医、眼科医などがいっぱい流れ込んできた。もともと“吹きだまり”のような業界だったのですが、立派な吹きだまりができてしまった。

 加えて、歯科でも美容に特化した「審美歯科」が食っていけなくなり、口の周りの唇やほうれい線などのしわ取りまで手を伸ばすようになった。フィリピンでは、口の周りから首まで進み、さらに一線を越えて豊胸術を始めちゃって、美容学会と歯科学会で長い間“戦争”状態になりました。結局、歯医者はやっては駄目ということになりましたが。

* クリニックの看板に掲げることができる診療科名

高須克弥院長Photo by Y.W.

──医者の利権が大きいのですね。

 入れ墨師も全て非合法になりました。脱毛もエステティシャンの仕事でしたが、「体の中に針を刺して電気を流すのは医者でなきゃ駄目だ」と全部排除された。でも実は、非合法の人の方が上手です。

 最近は貧乏な皮膚科医がエステの領域に入ってきちゃっています。手掛けるのは脱毛やフェイシャルなど。いざとなったら、保健所は医者の味方だからね。

 上手か下手かでいうと、大学の美容外科はうまくない。大学病院の飯の種でみんな始めたけど、結局どこで技術を身に付けるかといえば、開業医のところでアルバイトして習うんです。大学のブランドが良いところほど駄目ですね。