香港を拠点にアジアと欧州を股にかける戦略はこれまで、多くの企業に大きな収益をもたらしてきた。だが、中国と欧米諸国との関係が冷え込む中、その「二股」戦略は居心地の悪い、不安定な「別れ」へと姿を変えつつある。さらに悪いことに、新型コロナウイルスによる景気低迷で、一部の企業は政府支援を仰がざるを得なくなっている。こうした状況では、中国当局が眉をひそめる見解について支持を表明すれば、さらなるリスクに身をさらすことになりかねない。香港のキャセイパシフィック航空は、まさにこうした状況に追い込まれた。同社は9日、50億ドル(約5400億円)規模の資本増強計画の一環として、香港政府から35億ドルの資本注入を受けると発表した。合意では、いずれキャセイ株式の6%に転換できるワラントも政府に付与する。政府はお目付役として取締役2人を送り込むことが可能で、キャセイは経営方針に口出しする余地を香港政府に与えたことになる。