新型コロナウイルスの世界的感染拡大は日経平均株価を3週間で31%下落させたが、その後の各国の対応で株価は11週間で38%上昇した。

 興味深いのは、この株価急落と急上昇を通じていかに投資家心理の振れが相場に大きく影響するのかが観察できたことだ。

 具体的には新型コロナの感染と経済的ダメージへの懸念の高まりと、その後の経済活動再開と感染収束への期待回復が企業業績の変化以上に株価を動かした。次ページの図は日経平均と企業業績予想の推移を比較したものだ。株価は企業業績のトレンドラインを越えて上下に大きく動いていることが分かる。

 確かに新型コロナ後の企業業績の行方は非常に不透明であったので、株価が急落したのもやむを得ないといえる。

 しかし、日経平均が1万6552円を付けた3月19日にはTOPIX(東証株価指数)のPBR(株価純資産倍率)がほぼ0.8倍と、金融システムが停止するかに思われたリーマンショック時と同じ水準にまで下落していた(過去との整合性のためTOPIXのPBRを使っている)。

 本欄では今回は金融危機のリスクが低いこと、中国が先行して新型コロナの抑え込みに成功していたことなどから「株価は下値が限られる水準まで低下したとみる」として、リスクシナリオを考えても「株価の上値余地が出てくる」(3月12日の本欄)と述べた。