アメリカの学校では、中学生のカミングアウトも増えている。そういった状況から、LGBTの生徒へのサポートを積極的に行う学校がある一方で、生徒によるいじめや嫌がらせ、教師から発せられる心ないコメントは後を絶たない。20年前に設立されたGLSEN(グリセン=Gay, Lesbian and Straight Education Network/ゲイ、レズビアン、ストレートのための教育ネットワーク)は、年少のLGBTコミュニティーのためのサポート組織として活動し、学校環境の向上にさまざまな面で働きかけてきた全米でもよく知られるNPOである。GLSEN代表のエリザ・バイヤード氏にLGBTをめぐる学校環境の現状について聞いた。(聞き手/在米ジャーナリスト・瀧口範子)
自分と異なった人と交流できるかは
人生の成功を左右する
GLSEN(グリセン=Gay Lesbian Straight Education Newtwork)のエグゼクティブ・ディレクター。2001年よりGLSENに属し、教育プログラムの拡充や調査機能の拡大に貢献してきた。GLSEN以前は、調査報道センターの開発ディレクターを務め、また映画のプロデューサーとして、多くの映画作品に関わっている。コロンビア大学で歴史学の博士号取得。GLSENのサイトは: http://www.glsen.org/
――GLSENは、中学生から高校生までのLGBTの生徒をサポートする活動を行っている。その内容を簡単に説明して欲しい。
GLSENは20年前に創設され、それ以来、連邦、州、地元などさまざまなレベルの政府に対する働きかけや、中学生、高校生のLGBTコミュニティーの組織化、教師を対象としたLGBT教育、一般の人々に対する教育、そしてカリキュラムや教材の開発を行ってきた。
また、2年ごとにLGBT生徒の学校生活に関する『全米学校環境調査』を実施している。これは、LGBT生徒に回答してもらい、彼らに対するいじめや嫌がらせの程度はどうか、学校側のサポートがあるかどうかといった点を調べている。調査を行う大きな理由は、学校での差別の実態を調べることだが、同時にこれは、学校が次世代の生産的な大人を生み出しているかどうかを確認するためのものだ。
現代社会はさまざまなものが密接にコネクトされた世界になっており、個人レベルでも自分とは異なった人々、例えば自分と違う性的指向を持つLGBT当事者たちと一緒に仕事ができるかどうかなどが、人生の成功を左右する。学校が、そうしたことを意識して未来の大人を育てているかどうかは、非常に重要だ。また、一般生徒や教師、校長、小学生に対しても、LGBTに関連した別の調査も行っている。