トランプ発言で一転有利に
「ポストコロナ」で追い風が吹く中国

 事実、コロナ感染者の爆発的な拡大により、国際社会では中国への厳しい声が上がっているだけでなく、アメリカの感染者数は全世界の3分の1を占めることもあり、トランプ大統領の対中批判は日々激しくなっている。特に香港への国家安全法案導入は、「一国二制度を一国一制度にしてしまうものだ」として、香港への優遇措置の撤廃や中国当局者「個人」への制裁も勢いよく口にしていた。

 ところがほぼ時を同じくして、米国で白人警官に黒人男性が窒息死させられたことに対する抗議デモが爆発すると、トランプはデモの一部を「暴徒」と呼び、暴徒に対して米連邦軍を投入するとまで言い放ってしまったのである。

 これに飛びついたのは中国だ。

「24時間ぶっ通し」と言っても過言ではないほど米国の抗議デモを報道し続け、米国内の各地のみならずヨーロッパにも抗議が飛び火すると、そのすべての都市の特派員が声を限りに生中継をし続けた。

 特にトランプが米連邦軍出動に言及したときには、中国政府系メディアだけでなく、ネットまで燃え上がった。政府系メディアは「トランプには香港問題を批判する資格はない」と嬉々として叫び続け、ネットでは「川建国」という文字が躍った。中国語ではトランプのことを漢字の発音をあてがって「川普(Chuan Pu)」と表記することが多いが、「川建国」とは「トランプが中国を再建国してくれる」という意味である。今ではトランプのニックネームになっている。

 折も折、軍出動を米国防関係者にまで非難されると、トランプはなんと、香港問題で「個人」に科すことになっていた制裁に関して、「習近平に制裁を科すことはない」と表明したのだ。習近平の「高笑い」が聞こえるようではないか。せっかく対中包囲網が形成されようとしていた「ポストコロナ」の新世界秩序を、トランプの短絡的な発言がぶち壊しにしてしまっている。

 こうした状況の中、日本がどちら側に付くつもりなのか、目を離してはならない。どのようなことがあっても、習近平の国賓来日は阻止しなければならないと、筆者は強く思っている(この主張は田原総一朗氏との対談『激突!遠藤vs.田原 日中と習近平国賓』で述べた)。

(中国問題グローバル研究所所長 遠藤 誉)