中国のコロナ封じで活躍した「健康ID」
その驚くべき徹底ぶりとは

 なぜ、この「いいことづくめ」のように思えるアプリに暗雲が漂うのでしょうか。そのことを理解するために、お隣の中国の状況を見てみることにしたいと思います。

 日本が緊急事態宣言を発令した4月8日、お隣の中国では同じ日に武漢の封鎖が解除されました。新型コロナの新規感染者数が劇的に減少してきたからです。中国で新型コロナの拡大を防いだツールの1つが、3月頃から導入が進んだスマホの「健康ID」というアプリです。

 このアプリでは、持ち主本人の感染リスクが緑、黄、赤の3段階で自動的に示されます。そして上海市で働く知人によれば、オフィスビルに入るのも商業施設に入るにも、この健康IDの表示が求められるようになったといいます。

 何が基準で緑黄赤の表示が変わるのかは、公表されません。一方で、表示が黄色になると7日間、赤になると14日間、お店で買い物しようにも地下鉄に乗ろうにも、相手が受け付けてくれなくなります。結果として、自宅待機を余儀なくされる仕組みが、急速に北京や上海といった都市で導入されていったことになります。

 この話をしてくれた知人も、ある日突然、表示が黄色になったそうです。理由はわかりません。噂では、新型ウイルスに感染した人が乗っていた地下鉄の同じ車両に乗った人全員が黄色になるとか、同じ時間に同じビルに入っていた人全員が黄色になるといった具合に、GPSデータをもとに接触を判定しているのではないかといいます。

 そして、中国の定義において濃厚接触者にあたる、同居する人、一緒に働いている人などには、赤の表示が即座に出されるそうです。しかも、その赤の判定がとても正確だということが中国で話題になっています。

 つまり、防犯カメラ、顔認識ソフト、ビッグデータを処理できるサーバー、それを判別する人工知能など、すべてのインフラが総動員されているのではないかということなのです。これが、アフターコロナの近未来に優位だとされる「デジタルチャイナ型」の社会統治モデルです。