本書の著者は、上記の元部長について、「性格が悪いとわかって採用する会社はない」「謙虚でなければ再就職はかなわない」と指摘。50歳の課長に対し、「今のうちから誰に対しても謙虚な姿勢を崩さないよう心がけるべきだ」と助言している。

 さらに著者は、「他の会社でも人柄を含めた能力が通用するかどうか」を考えるのを勧めている。要は、肩書という鎧(よろい)を脱いだときに、その中にいる生身の「自分自身」の総合力で勝負できるか、ということなのだろう。定年という大変化を迎える前に、「鎧の中の自分」を磨いておくことが大事なのだ。

 上記の元部長のように「再就職が決まらない」どころではなく、「鎧がないことに気づかない」ことが問題行動につながった実例も、本書には紹介されている。

 製薬会社で営業本部長を務め、定年の4年前に早期退職した現在61歳の男性は、以前よりイライラすることが増えた。コンビニやスーパーの店員がもたついたり、病院の対応が悪かったりすると、自分でも驚くほどの暴言を吐くこともあった。その後、イライラはエスカレートし、店員の手際が良くても対応に温かみがないと感じただけで、コールセンターにクレームを入れたり、「責任者を呼べ!」と騒ぎを起こしたりするようになった。

 著者は、この男性について「働いていたときのように権威が通用しないことで承認欲求が満たされず、問題行動につながった」と分析している。

 承認欲求は、「なぜ承認されるのか」という理にかなった理由とセットでなければならないといえる。

 この男性の場合、退職前には「営業本部長として実績を上げていたから」という理由で承認欲求が満たされていた。しかし、退職すれば、その理由は消滅する。承認欲求が満たされないのは当然なのだ。

 承認欲求を満たしたければ、消滅した理由とは別の「承認される理由」を探すしかないだろう。その理由こそが、先に触れた「自分自身の総合力」にほかならない。