――感染症専門医、公衆衛生や疫学の専門家の過不足感についてはどう考えられていますか。
いずれも少ないですね。感染症は一時に比べれば話題性が出てきたけど、まだまだマイノリティー。また公衆衛生という広い分野の中でも、感染症の専門家はほんの一握りしかいません。今回のようなことが起きたとき、公衆衛生の専門家の中でも感染症を理解しながら動ける人材はやはり足りていません。
感染症・公衆衛生分野で今回のようにパンデミックが起きたときに対処できる人材を増やすには、この分野に行きたい人たちだけがほそぼそとやるのではなく、この分野に行った人が安定して仕事ができ、必要なときにはいつでも動けるようなシステムが必要。なのに、その仕組みは極めて脆弱です。
実はそのことは、前回の2009年の新型インフルエンザウイルスパンデミックのときに総括会議の報告書にも書いているんです。「もっと公衆衛生・感染症の人材が必要であり、その人たちが動けるように感染症研究所を拡充すべきだ。各地の衛生研究所と保健所を強化しないとダメ。PCR検査の体制も、国立感染症研究所の疫学部門や研究部門も拡充すべきだ」と。しかし、根本的な対策は置き去りにされた。
感染研は予算自体が削られ、保健所は拡充どころか統廃合で大きく数が減りました。そうしたことをしておきながら、今になって「韓国の体制が良い」などと言うな、と言いたいですね。