――今後新型コロナウイルスに対する医療体制はどのようなものが必要なのでしょうか。

岡部信彦氏おかべ・のぶひこ/1971年東京慈恵会医科大学医学部卒業後、小児科で臨床医として勤務。78年米バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員、91年 世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長、95年 慈恵医大小児科助教授、97年 国立感染症研究所感染症情報センター室長、2000年同センター長。09年の新型インフルエンザでは厚生労働省の専門家会議と内閣府の有識者会議委員を務める。13年から川崎市健康安全研究所所長。Photo:Jun.Takai/photocompany

 感染症関連だと、臨床を担当する感染症医と看護師、疫学などの公衆衛生の専門家、基礎研究を行うグループという専門家が3種類いるわけですが、対策には総合的な力が必要になります。この3者の連携がうまくいっているところが、今回もうまく対策ができている。病院でも同じことがいえます。人工呼吸器は感染症科でも対応できますが、ECMO(体外式膜型人工肺)までやると循環器の専門の人の協力が絶対必要になる。一方、患者全員がECMOや人工呼吸器が要るわけではない。重症の人をピックアップしてその人がきちんとした医療にアクセスできるようにする。そして、軽くて放置しておいても自然治癒する人でも、その心配や不安を和らげる。これも医療です。役割を決めながら、一部の特殊な医療機関での治療でなく、どこでも治療ができるようにした方がいい。

 さらに、この病気に医療関係者も“慣れる”必要があります。誰でも見極めができて、この人は安心できる、この人は危険なので本格的な医療機関に振り分ける、などの仕分けや送別が今後はより必要になるわけです。クラスターが発生したところでも、軽症で治っている人は多い。病気への理解が進めば、やることはもっと限定的になるでしょう。いろいろな情報は入ってきますが、走りながらでもより正しい方向に近づけていくことは、この病気を見ている人たちが果たすべき責任だと思う。

>>続編『コロナ専門家会議では、怒鳴り合いの激論が交わされていた』は6月23日(火)公開予定です。

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