――感染症や公衆衛生の専門家には海外経験が長い方が多いです。この分野の知識を得るには、やはり海外に出る必要があるのでしょうか。

 専門家会議でいうと、WHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局の出身者は確かに多いですね。尾身さんも僕も、(東北大学教授の)押谷仁さんも。年次で言うと押谷さんは僕の2代後輩に当たります。西浦さんもインペリアル・カレッジ・ロンドンなど海外経験が長い。臨床の人たちもどこかで海外病院でトレーニングを受けている人が多いです。海外は病気の種類も医療そのものも違い、土地の状況も習慣も違う。自分のところにない環境に飛び込むのはすごく大きな経験になるし、その後の自分のバックボーンにもなる。ただ、そのチャレンジを世の中が許してくれなかったり、一度行った人が戻ったらポジションがなかったりといったことがあり、改善が必要ですね。

――日本版CDC(疾病対策予防管理センター)をつくるべきだという議論もあります。

 米CDCのような組織がベストとはいえませんが、慢性の病気も扱い、病院における臨床の治療のみならず公衆衛生的な目でも知見を提供することができ、実験的な研究も支えているという意味で非常に力がある組織です。中国、韓国、台湾などの各国のCDCの活動も話題になりましたね。日本がああいう組織を持つのは難しいかもしれません。該当するのは国立感染症研究所で、僕の古巣でもありますが、もっと充実してもらいたいなとは思っています。