また、これも2009年の新型インフルエンザの総括会議の報告書に書いてあるのですが、行政や国の感染症専門職員が、ある程度長い期間同じポストにいられるようにしてほしい。

岡部信彦氏
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 例えば、感染研でFETPという実地疫学専門家養成コースをつくったのですが、そこで学んだ人たちが次のキャリアに進んでも、必ずしも学んだことが生きているわけではない。また、このコースを修了した人が保健所に行ったり行政機関に行ったりしても、そういう経験を積んだ人はすぐ人事異動で動いてしまう。

 日本の行政はゼネラリスト養成が基本方針ですが、例えば海外などでは厚生労働大臣は医師がやっていたり、官僚も同じ部署に10年間務めるエキスパートがいる。一方日本の場合、行政や国の公衆衛生の分野を担当する医系技官は、感染症を一度担当したら社会保障分野に異動したりするなど、あまり専門人材が生かされていません。今回、厚生労働省で新型コロナウイルス対策本部事務局長代理として現場を指揮した正林督章さんは新型インフルエンザのときの対策推進室長でした。もっとも、彼も環境省の審議官になっていたのを急きょ呼び戻されたわけですが。

――09年の新型インフルの総括が活かされなかった理由はなんでしょうか。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということに尽きると思います。僕は1月の段階で「新型インフルエンザの時の反省会の報告書と行動計画を見てくれ」と言ってきました。本来は、ゼロスタートではなかったはずです。同じことは二度と書きたくないです。

 何より、この病気は感染症としては「まだ生まれて1年たっていない」わけです。インフルエンザにしても肺炎球菌などにしても、病原体がわかってから何10年という歴史があり研究し尽くされている。新型コロナウイルスがどんなウイルスであるのかは、次の世代の医療人が時間をかけて解き明かしていかなければならない。根本的な解決は、現在の若手や今後医療人となって感染症と戦う人に委ねられているのです。次の世代に問題が解決されないままバトンを渡したくないですね。