残業時間の一本化が必要なのは、本業だけでは生活ができない場合である。労務管理によってきちんと立場を守らなければならないからだ。しかし、残業時間の一本化で副業の就業時間を制限したら、副業は促進されにくいだろう。

趣味の活動も報酬を得れば
制限すべき活動になる恐れ

 例えば、金融機関勤務の男性が食育に関心を持ち、フードアナリストの資格を取得したとする。副業ではフードアナリストとして、食育に関するセミナーの講師をしたり、食レポートの記事を書いたりして収入を得たとしよう。

 このフードアナリストの活動時間は、金融機関の本業とは無関係ではないだろうか。勤務時間外に本業とは違う社会貢献をしたいだけではないだろうか。土日にフードアナリストの活動をフルに行う場合、本業の残業時間と合算したら、恐らく月45時間の残業規制にすぐに引っかかるだろう。

 この活動を残業時間の一本化で管理下に置くことは、本業の勤務時間外の活動も本業の勤務先の管理下に置くこと以外の何物でもない。それで副業が促進されるだろうか。副業をしている立場の声が、政府には届いていない議論のように感じる。

過去にもあった
副業による雇用創出の取り組み

 過去にも国による副業での雇用創出の話はあった。非営利団体(NPO)やコミュニティービジネスの促進である。2001年に経済産業省は、NPOやコミュニティービジネスを促進する専門の部署を初めて設立した。地方局である関東経済産業局に創設したのだ。

 NPOやコミュニティービジネスを促進する目的は、出産を機に仕事をやめた主婦や、第二の人生を送る中高年のサラリーマンなどが、退職後も生活できるように雇用を創出できる環境整備を図りたい、というものだった。本業の経験を生かして第二の人生を送る。中小企業やベンチャー企業の支援を追求する経済産業省がNPOの支援を打ち出すのは、1998年にNPO法(特定非営利活動促進法)が施行されたばかりの01年当時では画期的だった。