ヘルスケア事業で初の1兆円台売上達成の富士フイルムHD、それでもバイオ医薬品開発・製造受託事業に「第3の蹉跌」リスク!?写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 日本に衰退と物価高をもたらした「アベノミクス」は「正しかった」と強弁する自民党の高市早苗新総裁。その認識にマーケットが呆れてもどこ吹く風のようだ。故安倍晋三政権の正統な後継者と公言するなか、必然的な流れとして、安倍元首相が手掛けた延べ8年半に及ぶ経済・産業政策においても、時ならぬ反動や復古が進みそうな気配が強まっている。

 事実よりも印象、物事の正誤よりも影響力の大小を価値の物差しとして貴ぶ特定の保守層が新総裁、そして恐らく第104代首相となる人物への支持に回っているだけに、世界のコモンセンスとニッポンの常識との間の溝は深まっていくことが避けられないと思われる。

 その安倍元首相と言えば、自らの政治観と一致する親米反中保守を掲げる経済人らによって組織された「四季の会」の面々と親密な交際を繰り広げ、折々に打ち出す政策にも彼ら政商の意向が色濃く反映されることがしばしばあった。「四季の会」を主宰した故葛西敬之JR東海名誉会長の意向を汲んだリニア中央新幹線プロジェクトが筆頭格だろう。ほかにも、福島第一原発事故を受けて全廃決定寸前まで追い込まれた日本の原子力発電は、同会の主要メンバーであった故勝俣恒久東京電力元会長らの“寝技”によって首の皮一枚で延命し、今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では「原発への回帰」と「最大限活用」が明言されるまで旧に復した。NHKも歴代の会長人事を牛耳られ、今ではほぼ政府・与党の代弁者へと成り下がってしまった。

 こうしたなか、代表的な「安倍銘柄」として、この世の春を謳歌したのが富士フイルムホールディングス(HD)であった。安倍元首相とも、葛西名誉会長とも親しかった古森重隆富士フイルムHD元会長がCEOとして君臨した00年から21年に至る22年間のうち、第2次安倍政権の期間と重なった12年から20年にかけては「我田引水」と邪推されても仕方がないような動きがしばし見受けられた。