天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』が好評だ。発売4日で1万部の大増刷となっている。
教育系YouTuberヨビノリたくみ氏から「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。連載のバックナンバーはこちらから。(初出:2020年7月5日)

たった51個しか見つかっていない、「完全数」は相当珍しい【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

51番目の完全数はとてつもなく大きい

 整数にはさまざまなキャラクターがあり、いろいろな名前が付いている。自然数、素数、偶数、奇数、三角数、平方数、友愛数、ピタゴラス数……。

 中には「完全数」という格好いい名前を持つ数もある。ご存じだろうか?

 整数aが整数bで割り切れるとき、bをaの約数という。そして、正の整数の範囲である整数のすべての約数(自分自身は含まない)を足し合わせたものがもとの数に一致するとき、その数を完全数という。最も小さな完全数は6である。完全数は6、28、496、8128、……と続くが、1万以下の完全数はこの4つしかない。これまでに完全数は51個見つかっている。

 2018年に見つかった51番目の完全数は4900万桁以上もある、とてつもなく大きいものである。紀元前4世紀頃から続く研究の中で、わずか51個しか見つかっていないのだから、完全数は相当珍しい数であることは間違いない。しかし、完全数は無数に存在することが期待されている(証明はされていない)。

 余談であるが、最初の完全数が6であることは、神が6日間で世界を創造した(7日目は休息日:日曜日)ことと関係があると言われている。イングランドへの布教で知られる初代カンタベリー大司教の聖アウグスティヌスも「6はそれ自体完全な数である。神が万物を6日間で創造したから6が完全なのでなく、むしろ逆が真である」と言った。

 また、6は最初の2つの素数(2と3)を掛け合わせた数であることから、6の倍数はいろいろな数で割り切れる便利な数になることが多い。実際、私たちの身の回りにある多くの数(12ヵ月、24時間、30日、60分、360度など)は6の倍数になっている。

 ちなみに、6の次の完全数である28については、原子核が特に安定する陽子と中性子の個数の合計(こうした数を魔法数ともいう)であったり、成人の頭蓋骨を構成する骨の数(舌骨を除く)や成人の歯の数(親知らずを除く)に一致していたりもする。また、28年経つと(閏年を7回またぐので)月日と曜日の関係が一巡する。つまり、28年前のカレンダーはそのまま使うことができる。