天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』が6月4日に発刊。発売4日で1万部の大増刷となっている。
教育系YouTuberヨビノリたくみ氏から「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。連載のバックナンバーはこちらから。
サイコロを3回振って3桁の数を作る
もし次のようなゲームがあったらあなたは参加するだろうか?
「サイコロを3回振って出た目を自由に組み合わせて3桁の数を作ってください(もし、出た目が1、5、6なら156や561などを作ることができる)。
次にその3桁の数を2回並べて書きます(156を作った場合は156156)。できあがった6桁の数を今度は7で割ってください。このとき出た余りをあなたのラッキーナンバーとします。このゲームではラッキーナンバーと同じ枚数の1万円札を受け取ることができます。ただし参加費は1000円です」
ラッキーナンバーは7で割った余りなので0、1、2、3、4、5、6のいずれかになる。最高賞金は6万円である。よっぽど運が悪く余りが0になってしまわない限り、1万円以上もらえると期待して参加したいと思う人は多いかもしれない。
でもちょっと待ってほしい。
私はこのゲームに参加することをお勧めしない。たとえば「156156」の場合を実際に計算してみよう。156156÷7=22308と割り切れるので余りは0。ラッキーナンバーは「0」である(賞金ナシ)。実はこれは偶然ではない。このゲームでは賞金はいつも0円になってしまうのだ。
種明かしをしよう。
3桁の数を2回並べた数を作ることは、3桁の数に1001を掛けることと同じである。そして1001は7で割り切れる。つまりあなたの「ラッキーナンバー」は必ず0になる。
ちなみにサイコロを使ったのはゲーム性を強調するためであり、2回並べて書く3桁の数はなんでもいい。