想定外ばかりの2020年
私たちが想定すべきこと
2020年も半分が過ぎた。年初の東京は、オリンピックの開催、渋谷や虎ノ門での新しい不動産プロジェクト、山手線新駅の誕生を控えていた。株式相場は底堅く、景気もしばらくは安定が続き、向こう1年の視界は良好に思えた。
ところが、あれから半年の間に、私たちは100年ぶりのパンデミック、大恐慌以来の景気後退、地球規模での行動制限を経験した。こんなことは誰も想定できなかった。
想定できなかったのは、人間だけではない。英国のブレグジットやトランプ大統領の誕生をソーシャルメディアの情報を分析して的確に予想したAIも、この事態は想定できなかった。ソーシャルメディアのビッグデータをどれだけ分析しても、新型コロナウィルスの拡散とそれが与える経済社会への影響を分析して、有意な判断が導けるとは思えない。
私たちはこれまで何度も「想定外」なことに遭遇し、将来の不確実性に対してさまざまな備えをしてきた。天災に備えて保険をかけるのは、典型的な備えの一つである。在庫を確保して物流の停滞に備えることや、売り上げの急激な減少に備えて銀行借入枠を確保するのは、企業ができる備えの一つである。
しかし、それでも私たちはまた新たな「想定外」に遭遇する。私たちができることは、想定外はいつ起こるかわからないと「想定」することくらいだ。この心構えが、2020年を経験した人類の新常態なのではないかとすら思えてくる。