米国社会の分断は揺るぎないものであり、社会の分断こそが自身の再選に有利な状況だと考えているからだろう。

 ワシントンでの抗議デモを警察官が催涙弾を放って一掃した後に、トランプ大統領が教会で聖書を持って写真撮影をしたことが話題になったが、それも自身の信仰心が厚いことを宗教保守の中心にいるキリスト教福音派に対してアピールしたものだった。

 このところ福音派の支持離れがいわれてきた中で、トランプ大統領にとっては催涙弾でデモ隊を一掃してまで教会に出向くことは、福音派からの支持を確実にする絶好の機会だったのだろう。

根強い「岩盤層」の支持
分断進めることが再選の道

 ワシントンでのパフォーマンスに対しては、宗教界から聖書を政治の道具に使うものだと、批判が殺到したが、大統領はこの件でも批判にはどこ吹く風だ。

 人種差別に反対する人たちに強硬姿勢を続け、米国社会の分断を扇動することが、再選に近づくと考えているのだろう。

 そして逆風を受けてもトランプ大統領が自国第一や保護主義緩めることはないだろう。

 緩めた先にトランプ氏が再選できる具体的な戦略があるわけでもない。

 支持率は低下したとはいえ、トランプ支持層は岩盤といわれるほど、一定割合を占める。メディアがトランプ大統領の政策や言動をいかに批判したところで、支持層は「でっちあげだ」と軽く受け流す。

 トランプ大統領にしてみれば、勝利を確かなものとするためにはまずは岩盤層の支持をより強固なものにする戦略だろう。

 再開した選挙集会でも、アリゾナ州フェニックスでは、抗議行動に屈しない姿勢を改めて表明。さらに、メキシコと接している同州南部の国境地域に足を運び、移民の流入を遮断する壁の前に立って自身の実績をアピールしている。

 南部と南西部で新型コロナウイルスの感染が広がり、選挙集会の再開で感染がさらに広がるリスクはトランプ陣営も認識しているはずだが、そうしたリスクを取ってでも選挙キャンペーンを行い、分断をあおり、抗議行動の広がる逆境を逆手に取ったような行動に出ているのだ。

人々の意識たきつける巧みさ
終盤で形勢逆転の可能性も

 しかもこうした戦略があながち失敗で終わるとはいえず、事の次第では成功する可能性がある。