賛否両論が渦巻く政府の国内観光需要喚起策「Go Toトラベルキャンペーン」は、東京発着の旅行を除いた形で、7月22日からの開始が予定されている。新型コロナウイルス第2波への警戒感が強まる中で、日本の観光地はどのような対策を行っているのか。コロナ感染拡大以前には外国人をはじめとする多くの観光客でにぎわっていた兵庫県豊岡市にある城崎温泉は、温泉街全体で独自のガイドラインを作成し、一丸となって対策を行っているという。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
「城崎温泉は、まち全体で一軒の旅館」
一斉休業が実現できた背景
「城崎温泉は6月1日から順次営業を再開しているが、5月末までは全旅館で一斉休業を行っていた」
こう振り返るのは、城崎温泉の旅館・山本屋の社長であり、城崎温泉観光協会の高宮浩之会長だ。緊急事態宣言下での全旅館の休業は、城崎温泉旅館協同組合の話し合いによって決まったという。
「本来、すべての旅館が一斉に休業するのは簡単なことではない。しかし城崎温泉は小さな旅館が集まった街で、昔から『まち全体で一軒の旅館』という考え方を持って共存共栄を図ってきた。だからこそ、一斉での休業が決断できたのではないか」(高宮会長)
城崎温泉のある城崎町では、コロナ感染者は発生していないが、これからも自分たちから感染者を出さないために対策をしっかり行った上で、6月1日から段階的に営業を再開し、徐々に観光客が戻りつつある。
現在、宿泊客の中心になっているのは兵庫県をはじめとする近場エリアの観光客。「STAY豊岡」という豊岡市が市民を対象に6月1日から7月31日まで実施している上限1万円で旅費の半額を補助する支援策の影響も大きいようだ。
「6月のインバウンド予約はゼロ、城崎温泉旅館全体の予約状況は例年の半分くらいだった。そんな中でも現在は、前日や当日など直前に予約をくださる近場のお客様が比較的多いため、シフトに入っていない従業員に急に出社してもらうこともある」(高宮会長)
こうして再開するにあたって、城崎温泉観光協会、城崎温泉旅館協同組合、豊岡市の観光地経営組織である豊岡観光イノベーションらが一丸となって作成したのが「城崎温泉における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」だ。