城崎温泉の夏の風物詩
「花火」は3密対策で実施へ
これらのほかにさまざまな対策を講じる中で、高宮会長がこの数カ月ずっと悩んできたというのが「夏の花火」の開催をどうするのか、だった。
城崎温泉では毎年、7月下旬から8月中旬頃までの平日夜9時から5~10分間、花火を上げて観光客や地元住民を楽しませてきた。しかし、これを行うことで混雑を生み出して、これまでの自粛で感染ゼロを維持してきた自分たちの努力を無駄にしてしまわないかという葛藤に悩まされてきたからだ。
だからといって止めてしまえば毎年楽しみにしている観光客をがっかりさせてしまう。そこで、城崎観光協会の青年部らが検討を重ね、今年は安全対策を行いながら、8月17日から8月末まで行うことを決めた。
「花火の観賞は『宿泊客に限る』ことも検討したが、実際には5分間の花火をわざわざ見に来る市民の方は多くない。市民の方には放送などで3密にならない協力を呼び掛けつつ、宿泊のお客様に関しても、可能ならお部屋や宿からご覧いただけるようにお願いする予定だ。例年であれば混雑する太鼓橋の上では人数制限をかけたり、大声での会話を避けていただいたりするなど、花火観賞にあたってのお願い事項もまとめており、まち全体で協力を促すようにしたい」(高宮会長)
外国人観光客も長期滞在する魅力
「日常」を取り戻せる温泉地に
コロナ以前はインバウンド需要が増加していた城崎温泉において、外国人観光客の多くは2~3日、長い人であれば2~3週間も滞在していたという。
「外国人観光客の方が長く滞在してくださるのはありがたかったが、正直『何するんやろ?』と思っていたところもあった。しかし彼らは『飽きない』『(日本の観光地で)ここが一番リラックスできる』と言ってくれていた。今になって、その意味が分かってきた気がする」(高宮会長)
現在、城崎温泉を訪れる近隣からの観光客も多くは、コロナ禍でたまったストレスを解消したい、リフレッシュしたいと語っているといい、城崎温泉の素朴な雰囲気が改めて日本人にも見直されるきっかけになっている。
「城崎温泉には特別なものはない。ただ、非日常を体験した人々が日常を取り戻せる場所として、より快適に過ごせるような場所として、将来的には全国からお客様にお越しいただけるようにしたい」(高宮会長)