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伊藤忠はファミマの全株式を取得した上で上場廃止にし、経営の意思決定を迅速化する Photo by Takeshi Shigeishi,123RF

伊藤忠商事が、コンビニエンスストア大手のファミリーマートに対しTOB(株式公開買い付け)を開始した。巨額案件を成功させるためには、伊藤忠が乗り越えなければならない三つの高い壁が存在する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

 伊藤忠がファミマ株の買い付けに費やす総額は約5800億円に上る。2015年に約6000億円を投じた中国中信集団(CITIC)への資本参加以来の巨額案件だ。

 伊藤忠は18年にグループでファミマ株の50.1%を取得し、連結子会社として既に経営を実質支配する立場にある。それでもあえて全株式を追加取得する狙いは、ファミマの非上場化に他ならない。

 人口減少に伴う市場縮小や人手不足、eコマースの拡大、さらに足元の新型コロナウイルスの感染拡大といった環境の激変に対応するためには、経営判断の迅速化が欠かせない。

 伊藤忠はファミマを非上場化した後、従前から取引関係のある全国農業協同組合連合会(全農)と農林中央金庫(農中)にファミマ株の約5%を譲渡する計画だが、こうした「戦略パートナー」で身内を固められれば、少数株主の意向を気にせずに大胆な経営判断を下すことができる。

 ファミマからの取り込み利益が増えることも大きい。21年2月期のファミマの純利益予想は600億円。この規模の利益が毎期安定的に上積みできれば、商社業界トップの三菱商事追撃に向けた足場固めとなる。

 ただし、これらはあくまで現時点の構想にすぎない。構想を実現するためには、伊藤忠は立ちはだかる三つの壁を乗り越えなければならない。