カナダと日本の
共通点と相違点

 カナダの経営学者、ヘンリー・ミンツバーグ氏にインタビューしたことがあります。彼は「人を重視する経営」など、カナダ企業と日本企業には共通する点が多いと指摘していました。あなたがご覧になって、共通点はほかにもありますか。また相違点は何でしょう。

 共通点の1つは、従業員に対する長期的なコミットメントです。2つ目は、ビジネスのリレーションシップに重きを置いていること。つまり顧客に対し強い忠誠心を持っていることです。3つ目は、地域社会にコミットしていること。日本の企業もカナダの企業も、利益だけでなく、社会における企業の役割を重視していることが共通点として挙げられます。

 一方、大きく異なるのは、ダイバーシティの考え方が国レベルでも、企業のレベルでも深く浸透しているかどうか。カナダでは経営トップが強い信念とリーダーシップを発揮して、ダイバーシティ・マネジメントに取り組んでいます。

 また、ファミリーの概念がビジネスでも非常に重視されていることも相違点として挙げられます。“家族”という視点から、しっかりと時間と機会を設けてビジネスに関与することが重要な側面となっており、これは極めてカナダ的な経営アプローチだと思います。

 カナダはアメリカの隣国であり、日本以上にグローバル化、デジタル化、AGFA(アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾン)による攻勢などの影響を被っていると考えられますが、カナダ企業が直面している課題とは何ですか。

 直面している課題は世界共通です。カナダはこれまで金融サービス、天然資源といった産業を中心に経済成長を遂げてきましたが、テクノロジーの進歩は、それらの業界に対して破壊的インパクトをもたらしています。

 デジタル・ディスラプションの影響はもはや免れることはできません。ですから、それを逆手に取った積極的な対応を図るべきだと考えます。カナダにはテクノロジーの分野で神格化された人物が何人かいますから、彼らの力を借りて、国内にテクノロジーのセンター・オブ・エクセレンスを構築すべきでしょう。それによってカナダの国内経済を成長させることにもつながりますし、多くの企業が恩恵を受けると思います。

 非常に個人的な話題で恐縮ですが、これまで出会った人物の中で、あなたにとってリーダーシップのロールモデルはいますか。

 私にとってそうした人物は2人います。1人は、私の妻です。そして、もう1人は残念ながら亡くなってしまいましたが、私の指導に当たってくれた上司でありメンターであった人物です。

 妻は、私のキャリアをともに歩んでくれました。2人で一緒につくり上げてきたからこそ、私たちはいつも“my career”ではなく、“our career”と呼んでいます。彼女がいたからこそ、現在の自分があると思っています。

 後者の上司は、私が若い頃にいたバンクーバーオフィスのマネジャーです。ビジネスにおいて人とどう接すべきかを私に教えてくれました。どうやって部下にやる気を出させるのか、働かなければならないから働くのではなくて、仕事をしたいからするというふうに意識を変えてもらうにはどうすればいいのか。彼は私のメンターとして、親身になってそういうことを教えてくれました。

 私は先ほど、CEOに求められる資質として、人の話をよく聞いたうえで常に一貫性のある判断をすること、そして感情的に知的であることを挙げましたが、よき家族や仲間に恵まれることが、そうした資質を育むための大きな助けになると実感しています。


  1. ●聞き手|岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部) ●構成・まとめ|堀田栄治 ●撮影|中川道夫