マーベルのビジネスモデル革新

図表1:筆者作成 拡大画像表示

フェーズ1.出版社として苦悩
作家も離れ、ついに経営破綻

 マーベルは1939年にコミックス出版社として設立し、成功を収めました。本を制作し販売してマネタイズするという意味では、出版業界としてごく当たり前のビジネスモデルでしたが、スパイダーマンやX-メンをはじめ、創造性に富んだコミックスを次々と世に送り出したため、売れに売れました。しかし80年代以降、経営サイドは売り上げ至上主義に走り、その横暴ぶりに嫌気がさしたコミック作家たちは、マーベルに見切りをつけライバル会社に次々に流出し、会社は存続の危機を迎えます。

 決定的となったのは、投資家であり企業再生家のロナルド・ペレルマンの買収です。ペレルマンは、コミックス出版というコアビジネスを全く理解しないまま、コミックスの値段を大幅につり上げたり、小売店に直接販売をするなど、安易で乱暴なマネタイズに走ります。その結果、1997年、マーベルはとうとう経営破綻してしまいます。

 18カ月間にわたる関係者の協議を経て、1998年10月に関係会社であった玩具メーカーのトイビズのオーナーであるアイク・パルムッターとアヴィ・アラッドがマーベルを獲得しました。ここから、コミック出版社の殻を破るべく、マーベルのビジネスモデルの大転換が始まります。

フェーズ2.マネタイズ変革で再建
マーベルを“タレントエージェンシー”に

 パルムッターは、1999年7月に、著名な企業再生家であったピーター・クネオをCEOとして迎えます。伝統的な出版社のマネタイズは、在庫リスクも高い上にマージンが低く、そこそこの売り上げではほとんど利益が出ません。クネオは、まずマーベルを利益の出せる体質にするため、マネタイズの変革に取り組みました。

 現有のアセットを使って多くの利益を生むにはどうしたらよいか。クネオは、マーベルのキャラクターをIP(知的財産)として活用するライセンス事業を思いつきます。彼の就任当時、マーベルの抱えるキャラクターは4700以上。マーベルのキャラクターが所属する“タレントエージェンシー”ができると考えたのです。そこでの価値提案は、キャラクターの特性を損なわないようにしながら、ハリウッドのメジャースタジオで映画化し、そこから出版事業や玩具事業にも波及するというものでした。

 クネオは積極的にこのビジネスモデルを採用しました。その結果、X-メンが20世紀フォックスで、スパイダーマンがソニー・ピクチャーズで、そしてハルクがユニバーサルで映画化されます。