拒否的抑止力には2種類ある。従来のミサイル防衛では飛んでくる矢(ミサイル)を撃ち落とすことだが、拒否的抑止力には、射手(発射装置)自体を破壊する軍事手段も含まれる。

 ただ、以前は発射台が固定され目標が定めやすかったし、ロケットに液体燃料を注入するリードタイムがあるので、相手のミサイル発射に対応ができた。

 最近は移動式で、山の中や地中に穴を掘って隠しておいて、そこから出してきてミサイルが発射される。それをたたくためには、相手の動きをリアルタイムで監視して目標を識別し、さらには相手の防空網をかいくぐって目標に接近して精密攻撃するということになる。

 しかし日本が独自でこの能力や体制を整備するのは時間とコストがかかる。

 となると、残るは、滑走路とか爆撃機や戦闘機の格納庫、指揮通信施設といった固定の軍事目標を攻撃するしかない。

 衛星や無人機などからの監視で位置などを確認してこうした施設に照準をあわせて限定的な反撃を加える。

 日本が整備できるのはこうした固定目標に対する拒否的抑止力だと思う。

 装備としては、弾道ミサイルや巡航ミサイル。日本では、今「スタンドオフ」といって航空自衛隊の空中発射ミサイルの射程を延ばすことが検討されているが、その延長線上で今後は巡航ミサイルの配備などが考えられる。

 トマホークは弾道ミサイルに比べてコストは安いし、目標に確実に行く精密誘導兵器なのだが、速度が遅いので、固定目標にしか対応できないが、それでも拒否的抑止力としては意味がある。

 また、かつて米国の専門家と議論した時に、無人機にセンサーを積みミサイル発射の瞬間を捉えてレーザーで照射し破壊するシステムについて興味深い話を聞いた。

 赤外線センサーだと、ミサイルが発射されて上昇している段階で噴射の熱を感知できる。それをもとにレーザーで狙うようにすれば、精度が上がるし弾切れの心配もない。

ミサイル全盛時代では
専守防衛の概念も変わる

――「専守防衛」という防衛政策の基本を逸脱することになりませんか。防御と攻撃の一体化で拒否的抑止の効果を上げると言いますが、防御と攻撃の境目が非常に曖昧です。

 私が考える自衛反撃能力は、あくまでも有事、つまり武力攻撃事態下で発動されるもので、その状況では防御と攻撃の区別などはない。