電力業界の頂点に君臨する東京電力ホールディングスの2021年3月期第1四半期決算が7月29日に発表され、販売電力量は5年連続で前年同期比を下回った。販売電力量の減少に歯止めが利かない要因は、新型コロナウイルスの感染拡大で電力需要が低迷しただけではない。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
5年連続の前年割れ
負け戦に慣れてしまった業界王者
電力業界の王者は、負け戦に慣れてしまったのだろうか。
東京電力ホールディングス(HD)の2021年3月期第1四半期決算は、298億円の最終黒字に踏みとどまったものの4年ぶりの減収減益となった。振るわない業績の背景には、実力のバロメーターである販売電力量が5年連続で前年同期を下回ったことがある。
販売電力量の落ち込みは予想されたことではある。大きな原因は、「コロナ禍」にある。新型コロナウイルスの感染拡大によって4月7日から約2カ月間、政府が緊急事態宣言を発令したため、東電HDの地盤である首都圏は経済活動が大幅に縮小された。
工場をはじめ飲食店やホテルなど経済が動かなければ、その経済を動かすエネルギーである電力も使われない。いくら外出自粛で家庭での電力需要が増えたところで、経済が縮小した分をカバーするには至らなかった。
ただし、東電HDの販売電力量が前年同期を下回ったのは、新型コロナによる影響だけではない。16年から始まった電力小売り全面自由化で、依然として他社に顧客を奪われているからだ。
決算内容を説明する東電HDの担当者は、決まり文句のように「競争激化」を顧客流出の原因に挙げた。しかし、コロナ禍に見舞われた今春は、自らの“失点”によるところが大きいといえるだろう。