社長の胆力を発揮させる土壌があれば、この状況は大いに改善するように思えるのは私だけだろうか? そのためのスタートポイントとして、CEOの報酬を大きく引き上げること、また長期インセンティブを増やすことが重要だと私は考えている。

キーエンスとAmazonが持つ長期経営視点

 最後に、ここまでに述べた問題に陥ることなく、長期的な経営視点で成長を実現した企業として、2つの事例を共有したい。まずは第1回の記事でも紹介したキーエンスの業績推移だ。

 キーエンスは、リーマンショック直後の2009年度、2010年度こそ減収に転じたものの、その後は驚異的な成長を実現し今日に至っている。これは、2009年以降、キーエンスは軸足を海外に移しグローバル化に舵を切ったからだ。そして何年もかけ、2015年には海外売上が国内売上を上回るほどにまで成長させた。この方向転換は一朝一夕にはいかないものだが、何年も辛抱して、海外の企業と同じ目線で共通の経営目標を持ち、継続的に挑戦、実行してきたことが、新興国の高い成長率の波をとらえることにつながったのではないかと推察する。

 もう1つ、アマゾンが株主に毎年発行している"Letter to Shareholders"を紹介したい。この手紙の中でアマゾンは、"Day One" すなわち上場時からの変わらぬ方針として、短期的な収益に左右されずに長期視点で株主に報いることを掲げている。配当を株主に還元せず、事業拡大に投資し続けてきた結果、アマゾンの株価は長期にわたり上昇し、現在では上場時の1000倍以上にのぼる。まさに長期経営視点のなせる業だ。

 以上のように、長期視点での経営環境をいかに醸成し維持するかということこそが、日本企業の本質的な課題だと考えている。

 次回は、変革を阻害する5つ目の要因である「既得権益層の逃げ切り思考」を中心に、現役CEOの優等生気質や、報酬の晩年回収モデルについて触れたい。

(次回へ続く)