そもそもスタートアップ企業に投資をすることとオープンイノベーションはどう関係があるのか?端的に言って、無関係である。

株主資本主義を進化させる
「スピンオフを含む事業再編の促進」

「スピンオフを含む事業再編の促進」などは最悪である。

 そこには、「既存企業がイノベーションを成功させるためには、(1)新規事業の実験と行動(知の探索)と、(2)既存事業の効率化と漸進型改善(知の深化)の両者を同時に行う「両利き経営」(オライリー&タッシュマン〈2016〉)が必要との指摘がある」とした上で、「大企業をはじめとする既存企業が「両利き経営」を行いやすくするため、(1)スタートアップ企業のM&Aなどによる連携促進や、(2)スピンオフを含む事業再編の環境整備を図る必要がある」とし、スタートアップ企業の買収を軸に事業再編、つまり経営を経常収支が増えるように効率化しろとしている。

 要するに株主資本主義を進化させろということだ。

 さらに、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、産業構造の大きな変化を伴うものと考えるべきであり、企業は、事業ポートフォリオの見直し、ノンコア事業の切り出し、両利き経営を一層進める必要がある。特に大企業については、企業価値向上のために、事業再編を積極的に行っていくことが重要である」としている。

 なぜ新型コロナの感染拡大が産業構造の大きな変化を伴うのか、全く根拠は示されていない。ただのイメージ論であろうが、コロナ禍でぼんやりとした不安が蔓延しているところ、それを悪用してイメージ論でもさも事実であるかのように刷り込もうということであろう。

 企業価値向上のための事業再編とは、とりもなおさず株主様のためのものであって、わが国の成長とは無関係。事業ポートフォリオの見直し然り、ノンコア事業の切り出し然りである。要は短期的に利益を生まないか、産んだとしても小さい事業は切り捨てろ、ということ。これではイノベーションもへったくれもないし、株主価値が成長するだけで、やはり我が国経済の成長には寄与しない。

 そして、「このため、スピンオフを含む事業再編を促進するための実務指針を策定し、企業に対応を促すとともに、事業再編等の円滑化を図る立法措置を検討する。」と、なんと政策的に、新たな法制措置をもって株主資本主義の更なる推進を後押しするのだそうだ。こうした誤った考え方を改めさせなければ、我が国のイノベーション、技術開発のタネは完全に潰えてしまうだろう。そんなことも理解できない、こちらもR・ドーアの言う「洗脳世代」の官僚や国会議員は後を絶たないが。