リーマンショック直後に就任したオバマ大統領は、大統領選挙のなかで、5年程度で米国の輸出を倍に増やすと発言している。過剰な国内需要で支えられてきた米国経済を是正するためには、国内以外に需要を求めなくてはいけない。それが輸出なのである。

 こうした流れから想定されるのは、ドル安への展開である。実際、米国経済が過剰需要体質であれば、為替レートはドル高方向に動きやすかった。国内需要が減速していけば、ドル安方向への力が働く。リーマンショック後、米国の金利が下がってきたことも、ドル安をもたらす要因となる。そして米国自身が輸出拡大を強く指向していることも、為替市場ではドル安を引き出すシグナルになるのかもしれない。

 このような形で、リーマンショック後、世界経済は需要の牽引車を失うことになる。リーマンショック後しばらくして、欧州で経済危機が広がると、欧州の需要も縮小していく。日本の景気も大きく落ち込んでいった。

 興味深いことに、そうしたなかで、リーマンショック後に最も早く景気回復を実現したのは中国であった。中国政府は大胆なケインズ政策によって国内需要を喚起しようとしたのだ。4兆元(約57兆円)規模の景気対策に、中国政府の意気込みが感じられる。

前々回述べたように、この大規模な経済対策には、落ち込んだ国内の景気を刺激するという本来の目的に加え、中国経済の構造を輸出偏重から内需主導型へ変えていきたいという意図もその背後にあった。

 短期的には、中国のこうした意図は成功したかに見えた。また中国経済の回復によって、世界経済にも好影響が出るという期待感が広がった。リーマンショックが起きた直後は50年か100年に1度の危機、あるいは1930年代に次ぐ深刻な不況に世界経済が陥るという悲観的な見通しさえ出た。しかし、中国経済の回復などもあり、そうした悲観は急速にしぼんでいった。

 ただ、その後の中国経済の展開は、必ずしもおもわしいものではない。強力な政策によって一時的に国内の投資需要を増やすことはできたが、それを持続的な内需成長につなげることができない。消費が十分に拡大しないからだ。