試合を中止した理由はグランパスから3人の新規感染者が出たことが、直接的な理由ではない。サンフレッチェ戦へ臨む上で、Jリーグが定める公式戦開催可否基準を満たせないとグランパスが判断したことが理由だった。

 新型コロナウイルスによる長期中断から公式戦を再開および開幕させるに当たって、Jリーグは試合実施要綱の条文に「エントリー可能な選手の人数がトップチーム登録の14人以上である場合、当該試合は予定通り開催される」という規定を追加することを6月の理事会で承認している。つまり、14人未満であれば、試合は開催できない。ちなみに、上限は18人だ。

 渡邉とスタッフの感染判明を受けて、グランパスは所轄保健所による2人の濃厚接触者の特定を待った。故障中の渡邉はトップチームとは別メニューでリハビリを積んでいたが、スタッフは大分への遠征を含めて、サンフレッチェ戦前日の25日のトレーニングにも参加していた。

 2人の濃厚接触者と目された選手は、サンフレッチェ戦のベンチ入りはできない。グランパスはPCR検査で陰性が確認された選手16人、スタッフ1人をすでに広島入りさせていたが、保健所の特定作業がサンフレッチェ戦の開始時刻に間に合わないおそれがあると判断した。そのため、ベンチ入り選手14人以上を確定させることができない可能性が高く、これが試合中止の判断の引き金となった。

 結果として渡邉およびスタッフの濃厚接触者はいないことが確認された。それでも、確実に安全が保証される可能性が脅かされた状況を受けて、再開および開幕後で初めてとなる中止に踏み切った村井チェアマンは、中止発表後に行われたオンライン会見でこう言及している。

 「選手たちもアスリートである前に市民です。社会的に感染が広がっている中で、選手たちにも感染者が出ることは時間の問題だと認識していましたが、日常的に用心していても、それでも感染してしまった点に新型コロナウイルスの感染力の強さ、恐ろしさを再認識しました」

感染予防は最大限行われていた

 グランパスは6月上旬にもFW金崎夢生、GKミッチェル・ランゲラックが新型コロナウイルスに感染。活動休止を余儀なくされたこともあり、クラブ全体で感染防止対策を徹底してきた。

 「日常生活におけるマスク着用、手洗い、消毒などの基本を徹底してきたことに加えて、不要不急の外出や外食を避け、ゲストを自宅に招かないことなども申し合わせてきました。クラブハウスでは毎朝検温を実施し、換気のためにロッカールームも開けてきました。最低でも週に1回は、場合によってはもっと定期的に感染対策について全員で集まり、注意喚起を行ってきました」

 村井チェアマンとともにオンライン会見に臨んだ小西社長は、クラブとして行ってきた取り組みをこう説明した。それでもJクラブの中で、稀有な状況に直面している心境をこう語るしかなかった。

 「保健所および市当局の指導に従いながら厳正に対応してきましたが、複数名の感染者が出ていることに関しては、今のところそれぞれのつながりが確認されていません」