日本代表として一時代を築いた本田圭佑は1月、新天地ブラジルの古豪ボタフォゴに加入した後、どのような活躍をしているのか。新型コロナウイルスの影響で長期中断を余儀なくされたブラジル国内のサッカーは、ボタフォゴが本拠地を置くリオデジャネイロ州で見切り発車的に再開を迎えた。中断期間中に34歳になった本田は来夏の東京五輪へ出場する野望を掲げながらも、勝利を求めるアスリートと命を尊ぶ人間との間で揺れる思いを、ツイッターを介して発信し続けている。(ノンフィクションライター 藤江直人)
ブラジルの地で奮闘する本田圭佑
胸中に抱く思いを世界へ向けて発信したい時、本田圭佑は自身のツイッター(@kskgroup2017)に英語で投稿する。例えば日本時間6日早朝に、日本から見て地球のちょうど裏側に位置するブラジル第2の都市、リオデジャネイロからこんな文面をツイートしている。
『Congratulations for Fluminense and they deserved to win the game. But I feel that I have to say... a rule will have to be changed. I have never seen no extra time or no penalty in a tournament.』
和訳すれば「おめでとう、フルミネンセ。彼らは勝利に値した。ただ、ルールを変える必要があると僕は言わなければいけない。延長戦や、あるいはPK戦のないトーナメント戦を僕は見たことがないからだ」となるつぶやきは、敗退で終えたばかりの大一番を対象にしていた。
現地時間5日に行われたリオデジャネイロ州選手権の後半戦、「タッサ・リオ」の準決勝。本田が所属する古豪ボタフォゴは、同じリオデジャネイロを本拠地とするライバルクラブのフルミネンセと対戦。ともに無得点で前後半の90分間を終えた直後に、規定によって敗退が決まった。
トーナメント戦で90分間を終えて決着がつかなかった場合、一般的には延長戦やPK戦が導入されるケースが多い。しかし、新型コロナウイルスの影響で、日程が過密気味になっている今シーズンのリオデジャネイロ州選手権では、特別なレギュレーションが導入されていた。
それは「同じスコアで前後半を終えた場合には、グループステージで上位のクラブが決勝へ進む」ことだった。12クラブが出場しているタッサ・リオで、ボタフォゴは勝ち点8ポイントを挙げてグループAの2位に入り、一方のフルミネンセは同10ポイントでグループBの1位だった。
ゆえにフルミネンセに負けてはいないものの、名門フラメンゴが待つ決勝戦へ進む道を閉ざされてしまった。特別ルールの存在を理解していても、ボタフォゴを率いたキャプテンとして、何よりも90分間を戦い抜いた選手の一人として、納得がいかない気持ちの方が大きかったのだろう。
フルミネンセへの敬意を表しながらも、その上で忸怩たる思いをつぶやく。アスリートならば誰もが内側にたぎらせている、負けず嫌いの一面を英文のツイートに色濃く反映させながら、今年1月に加入したボタフォゴにおける最初の戦い、リオデジャネイロ州選手権を無冠で終えた。