本が売れなくなるぐらい、「伝え方の技術」が普及すればいい
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki
――『伝え方が9割』は中国でもベストセラーになりました。特に『伝え方が9割②』は、すでに80万部売れています。
佐々木 ②のほうが!
――おかげさまで今、海外でも評判をいただいて、日本も含め世界全体で300万部近く売れていると聞いています。中国の方も、伝え方に苦労されているんですね。
佐々木 中国・北京のシリコンバレー的な、中関村というところがあるのですが、2017年にそこで講演会を行ったときは、100人以上の方が集まりもの凄い熱気でした。そして、「やる気のない部下にどう言えばいいですか?」とか、「同僚に何かお願いしたいんだけど、どうすればいいですか?」なんていう質問がどんどん寄せられて、日本も中国も仕事での悩みは同じなんだなと実感しました。ビジネスの場での悩みは、万国共通なのだと。
――私も同行させていただきましたが、凄い熱気でした。
佐々木 海外では今、日本の書籍が注目を浴び始めています。こんまりさん(近藤麻理恵さん)の『人生がときめく片付けの魔法』がアメリカで社会現象を起こしていて、それを機に日本の本のビジネス書が注目され始めたと伺いました。
『伝え方が9割』も、中国では半年間、連続でビジネス書部門で1位を取ったと聞いて、本当に嬉しく思いました。出版界で何か面白いことが起こりそうだという「兆し」を感じています。
――『伝え方が9割』は、中国のほかタイ、韓国、台湾の4ヵ国でも出版いただきました。
佐々木 私には夢があります。いつかは英語バージョンを作りたい。国が変われば、文化も慣習も異なりますが、でも誰しも「今の話、うまく伝わっていないな」と思う瞬間があると思うんです。英語圏の人のそういう悩みを、『伝え方が9割』で少しでも解消できたら、素敵だなと思っています。
――『伝え方が9割』単独で100万部という大きな目標を達成できたから、次の大きな目標として「英語版でさらに高みを目指す」というのもいいですね。
佐々木 一歩一歩目標に近づけたらとは思います。
ただ…もちろん本が売れるのは嬉しいのですが、「伝え方には技術がある」という事実を、もっとたくさんの人に知ってほしいというのが私の最大の願いです。「日本人の70%以上が自分は伝え下手だと思っている」という調査があって、おそらく多くの人が伝え方で失敗して悲しい思いをした経験を持っている。「自分は伝えるのが下手だから仕方ない」とあきらめてしまっているんです。でも、技術を知っていれば、誰でも簡単に、上手に物事が伝えられるようになります。
そうなれば、いままで諦めていたものが、実現できるようにかもしれません。なかなか通らなかった企画が認められたり、ずっとこじれていた人間関係が修復できたりする可能性もあります。そもそも、伝える技術があればケンカだって減らせるはず。みんなが伝え方の技術を習得して、『伝え方が9割』が売れなくなるぐらい当たり前のことになるといいな…というのが、僕の最終的な目標です。