誰もがすぐに真似できる「伝え方の技術」をまとめた、佐々木圭一氏のベストセラー『伝え方が9割』。2013年の発売以来、右肩上がりで売れ続け、後に発売された、『伝え方が9割(2)』『まんがでわかる伝え方が9割』『まんがでわかる伝え方が9割 強いコトバ』と併せてシリーズ143万部を突破しています。そしてこのほど、『伝え方が9割』単独で100万部突破という偉業を成し遂げました。『伝え方が9割』は海外でも発売され、特に中国では80万部突破の大ベストセラーになっています。そして日本では2冊のマンガ版も好調。今の『伝え方が9割』シリーズの反響と、今後の見通しについて、著者の佐々木氏に編集担当の土江が聞きました。(構成・伊藤理子 撮影・小原孝博)

40歳で『伝え方が9割』を出版し、人生が変わった

100万部のベストセラー『伝え方が9割』は、中国でも80万部のベストセラーに!

──当初は「5万部売れたら奇跡」とおっしゃっていましたが、いまや単独で100万部です。

佐々木 『伝え方が9割』は40歳のときに発売した本ですが、「40歳でも人生ってここまで変えられるんだな」というのが一番の実感です。

20代、30代の頃は、「40を過ぎると、そのあとの人生はそう変わらない。そのときいる場所に、ずっとい続けることになるんだ」と思っていました。でも、この本が僕を全然違う未来に連れてきてくれた。こんなに夢のあるものって、なかなかないんじゃないですかね。

――独立されて、何が一番変わりましたか?

佐々木 うーん、いろいろ変わりましたが…一番で言えば、「会う人」が劇的に変わりましたね。例えば、僕と同じタイミングで本を出された『ビリギャル』の坪田信貴先生とか、LINEの元社長で、C Channel社長の森川亮さんとか。お二人とは、ダイヤモンドオンラインでも対談させていただきましたね。

――サイバーエージェントの藤田晋社長も。

佐々木 そうですね!藤田さんで忘れられないのは、対談の場で「佐々木さんは伝え方が下手ですね」って言われてしまったこと(笑)。もともと下手だったことが、バレちゃった。

――『伝え方が9割』のあとは、『伝え方が9割(2)』、『まんがでわかる伝え方が9割』が発売され、そして先日はマンガの第二弾『まんがでわかる伝え方が9割 [強いコトバ]』が発売になりました。

佐々木 小・中学生や、本を読むのがちょっと苦手な人にも「伝え方の技術」を知ってほしくて、マンガ版はいつか出したいと思っていたんです。

最新刊の主人公は、伝え下手なせいで空回りしてしまい、仕事もプレイベートもうまくいかない20代の和田ヒナさん。でも、「強いコトバ」をつくる技術を身に着けることで困難を乗り越えていくという物語です。

――マンガ版第二弾になる最新刊では、「同じ言葉をどう言えば強く印象付けられるか」に特化されました。

佐々木 例えば、海外の雑誌が日本に初上陸する。そういう設定で和田ヒナが書いたコトバが

「いよいよ海の向こうから世界がやってくる」

でも、それを見た「伝説のオネエ」マリアが、一瞬にして直すんですよね。どう直したかというと、

「日本に世界がやってくる」

明らかに、こちらの方が印象的です。

世の中の人は「才能がある人にしかこんな言葉は作れない」と思っているけれど、これは技術を使ったものであって、技術さえ理解すれば誰でも作れることを、主人公のヒナは気づくのです。

この例で使ったのは「ギャップ法」という技術です。「日本」と「世界」という、伝えたい言葉とは正反対の言葉を入れて、メッセージ性を強くしています。

――主人公の和田ヒナちゃんは新人コピーライターですが、どんな職業の人でも、学生や主婦、お年寄りもすぐに役立てられる内容になっていると思います。

佐々木 例えばビジネスパーソンなら、仕事でメールを送る機会も多いでしょうし、企画書を書くことも多いでしょう。プライベートではSNSに投稿することも多いのでは?

でもなかなか相手に認めてもらえない、理解されづらいという場合は、もしかしたら内容が悪いのではなく、「伝え方が悪い」可能性があるんです。同じ内容のメールでも。タイトルを魅力的に変えてあげるだけでも一気にきらめく。その事実を一人でも多くの人に知ってもらいたいと思っています。

――マンガ版を作ってみてから気づいたんですけれど、本ってなかなか2回、3回と読み返す人って少ないのですが、マンガは面白かったら何度でも読み返す人が多いんですね。『まんがでわかる』シリーズも何度も読み返してもらえれば、伝え方の技術もそれだけ頭に入りやすくなり、再現性もさらに高まります。そういう意味でも、マンガって面白く、魅力的なメディアだと思いました。