なぜ自分はストレスに耐えられなかったのだろう? どうして気にしすぎてしまうんだろう? 鈍感だったらもっと楽に生きられるのに──。
 あなたには、仕事でそんな悩みを持った経験はないだろうか。まわりの人が気にしないような小さなことが気になる、相手の気持ちを敏感に察知してしまって疲れるなどの悩み。実はそれはあなたのせいではなく、「繊細」な気質があるというだけなのかもしれない。
『世界一受けたい授業』など多数のメディアで話題のHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)専門カウンセラー・武田友紀先生は、「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な感性であると語る。
 今回は、「繊細な感性を持つからこそ」深く味わえる幸せを紹介する『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の発売を記念し、著者・武田先生に取材を行った。
 ストレスで会社を2年間休職したことがきっかけでHSPを自覚したという武田先生は、「繊細さは克服するべき課題ではなく、毎日の幸せを存分に味わえる大事な感性である」と語る。
 繊細さんが幸せになるためにどのようなステップをふんでいくべきなのか、徹底してお聞きした。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

成果主義から一歩外に出ると、満たされる幸せが花開く

──武田先生は、「繊細さん」であるがゆえにうまくいかなかった、いわゆる「下積み時代」はありましたか?

武田 9年間、会社員だったんですけど、その間、ずっと辛かったですね。忙しい部署で、毎日夜中まで働いていました。社内で表彰されるなど仕事上の成果を出してはいましたが、どんなに評価されても自信を持てなくて。「あれもこれもやらなくては!」と自分に鞭を打っていました。

 ただ、その中で、私が壁にぶち当たっていたのは、他の同僚たちよりもストレスを感じやすいことだったんです。ストレスはある、でも成果は出したい。成果を出したいと思ったら、めちゃくちゃ働くしかない……。そういう職場だったんです。「力を発揮する=ストレスフルである」という状態が、会社にいる間、ずっとあったんですよね。

武田友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー
自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れる。著書に『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)がある。ラジオやテレビに出演する他、講演会やトークイベントなども開催し、HSPの認知度向上に努める。

──そういった苦しい期間を乗り越えたきっかけは、何だったんですか?

武田 私にとってのブレイクスルーは、2回ありました。一つ目のブレイクスルーは、「やりたくて、得意なことしよう」と方向転換をしたこと。私は会社をやめて、今はカウンセラーの仕事をしています。独立後の数年間は会社員のときよりももっと働きましたが、全然辛くなかったんですよ。

 苦手な分野や、合わない環境で成果を出そうと努力するのはつらいですよね。でも、自分に合った環境で自分のやりたいことをやっていると、いいスポーツをしてるみたいに、体は疲れるけど、心は元気なんです。だから、自分がやりたいほうへ方向転換をしたのがよかったんだと思います。

 二つ目のブレイクスルーは、独立後数年して、「成果が第一」になってしまっていた自分に気がついたこと。成果を出したくて必死なときって、毎日、心が満たされるような幸せには届かないんですよ。花なんか眺めてる場合じゃないじゃないですか(笑)。

──たしかに、ストレスフルな環境で成果を出したいと思っていると、身の回りの小さな幸せを探す心の余裕もないですよね……。

武田 そうなんです。だから私は、自分が成果主義の中で生きていたなと気付いたときにようやく、コーヒーの香りがいいなとか、空がきれいだなとか……。そういうことが、よく見えるようになったんです。だから、自分なりの幸せを見つけるまでに、何回もブレイクスルーがありました。「自分が得意で、やりたいことをやろう」と決めたのが1回目。その後、「成果よりも幸せのほうが大事だ」、と気付いたのが2回目。