株が少し持ち直してきました。果たしてこれは一時的なものでしょうか?それとも?
そして、為替ではユーロが上がってきました。これは、株高と無関係なのか、それとも関係あることなのでしょうか。今回はそれらについて解説してみたいと思います。
NYダウは、先週約10%の反発となりました。果たしてこれで株は底打ち、反転となったのでしょうか。
このような3月上旬の米国株底打ち、反転は昨年と同じ現象です。NYダウは昨年も3月10日に当面の底を打つと、その後5月まで約2ヵ月上昇基調を展開したのです。今年のNYダウは、これまでのところ3月9日に底打ち、反発となっていますが、このまま昨年と同様に2ヵ月の株高となるでしょうか。
そんな具合に、「春の株高」が昨年のように2ヵ月続くかどうかは、為替を考える上でも注目されそうです。先週から株高になると、為替はユーロ高・ドル安になっています。つまり、これまでのところ、「株高=ユーロ高・ドル安」となっているわけですから、この関係がこの先も続くなら、株高が続くかどうかは、ユーロ高・ドル安が続くかどうかと同じ意味にもなるわけです。
100年に一度の危機で復活した
「有事のドル買い」
ところで、そもそもなぜ「株高=ユーロ高・ドル安」といった関係になっているのでしょうか。これについて私は、「有事のドル買い」逆流といったことがあるのではないかと思っています。
株とユーロ/ドルの関係は、3月第1週までは「株安=ユーロ安・ドル高」でした。今年のNYダウの高値は、年明け早々の9000ドル、そしてユーロの対ドル高値も、年明け早々の1.4ドルです。つまり、NYダウもユーロ/ドルも、年初に高値をとり、その後、2月末・3月はじめにかけてともに続落してきたのです。
こういう動きを、私は「有事のドル買い」と考えてきたのです。年明け以降の、NYダウが一時7000ドルも大きく割り込んだ動きは、「100年に一度の危機」を反映した結果ですから、その意味では経済・金融の「有事」と言えると思います。そういう中で、ドル買い・ユーロ売りが広がってきたわけですから「有事のドル買い」ということになるでしょう。
「有事のドル買い」という言葉は、為替の歴史の中で昔からあった言葉です。戦争などの「有事」では、基軸通貨ドルが避難先として買いを集めるといった意味ですが、それはここ10年以上、ほとんど「死語」のようになっていました。いわゆる双子の赤字などにより、基軸通貨ドルも避難通貨の役割を担えなくなっていたからです。
その意味では、最近の動きは「有事のドル買い」復活と言えるでしょう。なぜそのようなことになったのか。逆説的になりますが、それは「100年に一度の危機」だからではないでしょうか。
「普通の危機」なら、基軸通貨ドルに買いが集まるといったことはもはやなくなってきた。しかし「100年に一度の危機」となると、やはり頼りになるのはキャッシュ、現金であり、それは基軸通貨、決済通貨の米ドルです。今回「有事のドル買い」が復活している背景はそんなふうに理解できるのではないでしょうか。
さて、解説が長くなってしまいましたが、こんなふうな「有事のドル買い」の考え方からすると、年明け以降、「株安=ドル高・ユーロ安」が展開してきたことも辻褄が合うでしょう。そして、先週から株高に転じると、為替もドル安・ユーロ高になっているのは、「有事のドル買い」逆流という話になるわけです。
さて、話を元に戻しましょう。「春の株高」は、昨年のように5月まで続くのか。それとも、今年は短命に終わるのか。逆に昨年以上に長く続く可能性はないか。それを考えることは、「有事のドル買い」といったキーワードを間に挟むことによって、先週から起こっているユーロ高・ドル安の行方を考えることにもなるでしょう。