『FACTFULNESS』(日経BP社)など話題のビジネス書を次々と手掛ける翻訳家の関 美和さん。新刊書籍『ザ・ビジュアルMBA 経営学の要点を学べるスケッチノート』でも、POPなイラストにぴったりの軽快な翻訳で、一気に読ませてくれます。その関さんもかつてハーバード・ビジネス・スクールでMBAを学んだ一人。そのご経験から入門書としての本書の魅力を語ってくださった「おわりに」を紹介します。

MBAと聞くと、難解な専門用語を操る経営コンサルタントを思いうかべる方もいるかもしれません。この敷居の高そうなMBAとは、一体何でしょう?

関 美和(せき・みわ)
翻訳家
杏林大学准教授
慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な訳書に『誰が音楽をタダにした?』(ハヤカワ文庫NF)、『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(協約、日経BP社)、『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社)など。

MBAを日本語に直すと「経営学の修士号」。

では、「経営学」とはどんな学問で、これを学ぶとどんないいことがあるのでしょうか?

「経営学」とはその名の通り、事業経営に必要なさまざまな側面を分析し、成功と失敗の法則を導き出そうとする学問です。経営に必要な側面とは、たとえば財務、会計、マーケティング、生産管理、人事、戦略といったもの。外国語と同じで、それぞれの分野には専門の言葉があり、文法が存在します。言葉を知り、文法を知ることで、先人が築いてくれたフレームワーク、つまり経営における共通言語が理解できるようになるのです。

MBAを取得することとはすなわち、経営における共通言語であるフレームワークを学び、経営上の問題解決に役立てることでもあります。

本書『The Visual MBA』は、本来なら2年という時間と数万ドルの学費を支払わなければ習得できないはずの経営に関わるさまざまなフレームワークを、イラストにして誰にでもわかるように解説した入門書です。MBAは敷居が高いと感じている方、ビジネスや経営について学びたいけれどどこから入っていいかわからない方、あるいは起業にあたってひととおり経営のコンセプトを知っておきたい方にはぴったりです。

さらに上を目指したい方は、まずこの本で経営の基本の語彙と文法をおさらいし、実際にMBAを取得するために進学してもいいでしょうし、ほかの経営書でさらに学びを深めることも可能です。

ではフレームワークを知ると、どんないいことがあるのでしょうか?

まず、複雑な情報を単純化してくれるので、思考の時間が短縮されます。どこに問題があるのかを整理し、思考のとっかかりを作ってくれるのもフレームワークです。そして、フレームワークはビジネスの共通言語なので、これを使うことでコミュニケーションの時間も節約でき、すばやく共通の認識を持つこともできます。そして何より、フレームワークは過去の失敗と成功のパターンから生まれたものなので、よくある経営の落とし穴に陥ることを避けるひとつの手助けになるのです。

実は私が卒業したハーバード・ビジネス・スクールでは、このフレームワークを直接的に教えてはくれません。膨大な事例研究を読み、議論を戦わせることを通して、自分なりの問題解決の作法を見出していく訓練を施されます。ですが、たくさんのリアルな成功と失敗の事例の中から浮かび上がってくる問題解決の作法は、すでに先人が見つけ形にしたもの、つまりフレームワークに基づくものだということに、あとになって気づかされました。

読者の皆さんがこの本でお金と時間を節約しながら、ビジネスの共通言語を学ぶための入り口をくぐることができれば、翻訳者としてこれほど嬉しいことはありません。

2020年6月
関 美和

興味の湧いた方は、続きもぜひ『ザ・ビジュアルMBA』でチェックしてみてください!