VIPアテンダント時代に学んだ「育ちの良さ」

『「育ちがいい人」だけが知っていること』の著者ってどんな人?

―― 私も同じような経験があるので、よくわかります。その後は?

諏内 知り合いからVIPアテンダントのお話をいただいたんです。VIPをご案内するお仕事は、未知の世界でしたけれど、「やってみたい」と思い、すぐに転職しました。といっても、もちろん素人ですから、アテンダントを養成するプロの先生の指導を受けて、マナーから立ち居ふるまいまで本格的に学びました。そのおかげで、自信を持って接遇の仕事をすることができましたね。

―― VIPアテンダント時代に担当した方で、印象に残っている方はいらっしゃいますか?

諏内 特に印象深かったのは、先代の市川團十郎さんです。あるイベントで丸一日お付き添いしたことがあったのですが、当時まだ20代半ばだった私に終始敬語でお話して下さり、とても丁寧に、また敬意をもって接してくださいました。言葉づかいも所作もすべてにおいてエレガントで品格ある方でした。私だけでなく、関係者のみなさんにも「ありがとうございます」と丁寧に御礼をおっしゃるその姿からもオーラが漂っていましたね。

実は、その日のご昼食は、私は控え室でお待ちする予定だったのですが、「あなたも一緒に食べましょうよ」とお誘いくださったのです! 一度は遠慮したのですが、「いいじゃないですか。ご一緒しましょうよ」とおっしゃってくださり、「松本楼」のお食事をご一緒させていただきました。私の宝物の思い出です。

團十郎さんのように一流の方ほど謙虚で、相手がどんなに若い人でも気遣いをお忘れにならないということを学ばせていただきました。お互いにリスペクトした大人の関係とは、実に心地よく、双方豊かに過ごせるということも。