二党そろっても盛り上がらない党首選
谷垣、細野両氏の不出馬の影響は?
10日になって、突然谷垣禎一自民党総裁が総裁選への出馬を断念した。
谷垣総裁は「今朝まで出るつもりだった」が、断念は「一瞬の判断」だったと言う。
出馬するために全力で走ってきたが、ふと“不出馬”の言葉がよぎったのだろう。それで急速に気が抜けて走ることができなくなった。そういうことだろう。私も政治の現場にいたので、何となく彼の心境の変化を理解できる。
これから民主、自民両党ともに党首選に突入する。ところが、一党の党首選でもそれなりに盛り上がるものだが、二党そろっても今回は一向に盛り上がらない。
ただ、どんなにつまらない政局でも、何らかの意外な展開によって、ささやかな盛り上がりは現出するもの。しかし、これも細野豪志氏と谷垣総裁の不出馬によって、「盛り上がりカード」も使い果たしてしまったようだ。
私も細野氏の代表選出馬に強い期待感を述べたが、それは彼の出馬が民主党の現状を打破して新しい党秩序と方向性を論議する最後のチャンスになると信じたからである。
彼の出馬への期待は、燎原の火のように広がることを予感させたが、点火されたとたんに水をかけられ踏みつけられて消えてしまった。
おそらく民主党代表選での盛り上がりはこれで終わり、今後は退屈な選挙活動を見せられるだけかもしれない。
自民党総裁選ではこれから“谷垣不出馬”の経緯が大きな軸となることが避けられまい。
谷垣同情論によって石原伸晃氏は失速を余儀なくされ、かわって「長老支配の打破」を訴えてきた石破茂氏に急浮上の可能性が出てきた。
安倍晋三元首相も出馬への強い意欲があると言われるが、出馬表明が遅れたことが響いて影が薄くなりつつある。谷垣不出馬が石原を利するのではなく、意外にも石破氏の勢いを強めることになったのである。