視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
24年で爆発的に成長し変貌を遂げた
巨大プラットフォーム「ヤフー」
昨年11月に発表されたヤフーの親会社ZホールディングスとLINEの経営統合は、IT業界のみならず、一般ユーザーの間でも驚きの声とともに受け止められた。現在は、公正取引委員会の審査を終え、条件付きで承認を得て来年3月の実現が目指されることになっている。
ところでLINEの主なユーザーである若年層にとって、ヤフーはどのように映っているのだろうか。おそらく「検索エンジン」というイメージは薄くなっているのだろう。
だが、私のような古くからのPCユーザーにとって、ヤフーといえばグーグルと並ぶ代表的な検索エンジンだ。
私がインターネットを使い始めた1996~97年頃は、サイト(ホームページと呼んでいた)を見つけたり、ネットサーフィンを始めたりするのには、まずヤフーを開くのが常識だった。エキサイトやフレッシュアイなど他の検索エンジンもあったが、圧倒的にヤフーの使い勝手がよかった。
1998年頃、パソコン雑誌の片隅に、えらくシンプルな見た目の新しい検索サイトが紹介されていた。ヤフーのように、ずらずらとカテゴリーが並ぶことなく、ロゴと検索ボックスだけで構成されたそのサイトこそ、グーグルだった(初めゴーグルと読んでしまった)。
使ってみると、グーグルの速さと精度に驚かされることになり、私はすぐにヤフーとグーグルを併用するようになった。そしてやがて、グーグル以外の検索エンジンを使わなくなる。
今ではヤフーはいろいろなサービスを展開しているが、よく使うのはヤフー・ショッピングとヤフー・ニュースだろうか。検索で使うことはほとんどない。StatCounterのデータによると、日本でのPCにおける検索エンジンのシェアでヤフーは13.82%(2020年7月)にすぎない。一方、グーグルは同時期で77.67%と圧倒的だ。
このように24年ほどで変貌を遂げたヤフーだが、その創業者をご存じだろうか。孫正義氏と答える人が多いかもしれない。実は孫氏は初代ヤフー・ジャパン社長に就任したものの、その立ち上げを主導し、創業時から事実上のトップとしてヤフーを爆発的に成長させたのは、2012年まで2代目社長を務めた井上雅博氏(故人)である。