日本の「反撃」が
「先制攻撃」になる恐れ

――ご自身はどう考えているのですか。

 私自身は、今まで敵地攻撃能力の保有を積極的に主張したことはない。

 15~16年前、防衛庁長官をしていた時も、北朝鮮のミサイルの脅威や専守防衛について国会で何度も問われた。

 専守防衛の理念は、相手から攻撃を受けて初めて自衛権として実力を行使するという受動的防衛戦略として具体化されるが、相手から攻撃を受けて被害が出てからでは遅いし、相手の攻撃を受ける恐れがある段階で攻撃するのでは早すぎる。

 それで当時は、相手が日本に対する攻撃に不可逆的に着手した時点で反撃ができると答弁した。

 具体的な例として、北朝鮮のミサイルが発射台に据えられ、液体燃料を注入し始めたような時がそうだと。

 だが、いまや北朝鮮のミサイルは固体燃料を使えるようになり、発射台も移動式で、状況の把握が難しくなった。不正確な情報によって日本の「反撃」が「先制攻撃」になってしまえば、日本が国際社会から批判を受けることになりかねない。攻撃能力には、それを正当なものとするための強力な情報能力も必要だ。

 専守防衛の理念を踏まえ、日米同盟の役割分担として、「矛」(攻撃)は米軍、「盾」(防御)は日本、としてきた。しかし「矛」を持つかどうか以前に、わが国は「盾」としての能力にも不安が残る。

 シェルターだけでなく、自衛隊の人員や弾薬なども不十分だ。少子化の影響で人員は減少傾向だし、弾薬や燃料などの後方分野も今まで必ずしも充実させてこなかった。防衛大綱でこうした部分を重点的に整備することを掲げてはいるが、喫緊の課題だ。

石破 茂・元自民党幹事長
Photo by T.U.

日米安保や自衛隊の位置づけは
時間をかけて議論すること

――日米安保条約の非対称性や自衛隊を「軍」とする憲法改正を唱えるなど、現状の安保防衛政策の枠組みを変えることを主張してきましたが。

 それは根本論になるので、ある程度、時間をかけたしっかりした議論が必要だ。日米安保条約はより対称なものにしなければ持続可能性が低くなると思っているし、自衛隊は明確に自衛権に基づいて位置づけるべきだと思っている。

 日米安保条約の本質は、米国が日本を守る代わりに日本は米国に基地提供の義務を負い、米軍が日本の領域を好きなように使えるということにある。

 米国と安全保障条約を締結している国はほかにもあるが、双方の享受する権利と義務が同じでない条約は日米だけだ。日米の場合、日本は敗戦後の非武装状態から始まり、朝鮮戦争や共産主義勢力の拡大などの情勢変化を受け、冷戦時の国際政治情勢が反映されて、独特なものになった。