積極的な姿勢で
対中関係強化に動く韓国・文政権

 韓国の文在寅大統領は、中国との関係を修復し、それを政治基盤の安定につなげたいと、もくろんでいるだろう。足元の文政権の内政は八方ふさがりだ。韓国では不動産価格の高騰に不満を抱く人が増えている。輸出の減少によって景気は冷え込み、若年層を中心に所得・雇用環境も厳しい。外交面では、文氏が重視してきた南北の宥和がうまく進まなくなった。安全保障を頼る米国からは、米軍駐留費用の負担引き上げを求められている。

 その状況下、習氏が早期訪韓を重視していることは、文氏にとって“渡りに船”だろう。韓国が米国のミサイル防衛システムであるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備して以降、中国は韓国への団体旅行を禁止するなど、中韓関係は冷え込んだ。

 習氏の訪韓によって文氏は中韓関係の修復を目指し、中国の需要を取り込む体制を整備したい。それが実現すれば、文政権は自動車や半導体など主要産品の対中輸出を増やして景気を支え、支持率回復を目指すことができるだろう。文政権が香港問題などに関して明確な立場を示していないのは中国への配慮からだ。

 その一方で、文政権は対中包囲網の強化を目指す米国に対しても、明確な見解を示していない。ある意味、文大統領は米中に対して等距離感覚で立ち回ることがそれなりに可能であり、それによって米中双方から利得を得ることができると考えているようだ。

 ただし、現実的に考えると、米国は同盟国である韓国が中国の経済圏に入ろうとすることを許さないだろう。中韓関係の強化は半導体製造能力の向上を支え、国家資本主義体制の強化につながる恐れがある。先行きは読みづらいが、仮に、文大統領が中国との経済的な関係強化に真剣に注力するのであれば、米国が安全保障を理由に韓国に様々な圧力をかける可能性は排除しきれない。特に、韓国にとって、米国の半導体製造装置は不可欠な要素の一つだ。今後の展開によって、韓国の社会と経済は、かなり深刻な状況に直面する恐れがある。

最終的に韓国は
米国への依存体制を崩せない

 国家の存続にとって、安全保障体制の確立は何よりも重要だ。安全保障がしっかりしていることが、経済活動と人々の安心を支える。安全保障を米国に依存する韓国が、中国の経済圏に入る展開を想定することは現実的ではなく、かなり難しい。