コロナ禍を乗り越えるための策は恒久的な作戦に
店のブランド意識も向上

 ここまでくると、外売はコロナ禍による経営の危機を乗り越えるための一時的な対応手段というだけではなく、恒久的なビジネスとして捉える中華レストランも増えている。その象徴のひとつがブランド意識の向上だ。

 中野富士見町駅付近に新しく開店した「小薇点心」は、ジューシーな肉汁が印象に残る爆汁肉まん、ビーガンのニーズを意識した野菜まんを売りにしている。テレビの料理番組に料理家として出演しているオーナーの小薇さんは、市場のニーズをつかんだうえでのブランド作戦だという。

 料理の包装パックや手提げ袋などを、個性的なデザインで統一する中華レストランもある。御徒町駅の近くにある「鼎上記」だ。ここのスペアリブの甘酢煮は私の好物だ。

「鼎上記」のデリバリー(写真:著者提供)

「鼎上記」は開店早々、コロナ禍に巻き込まれ、泣く余裕もないまま、危機脱出にいち早く取り組んだ。おそらく東京の新華僑(1980年代に入ってから、中国国外で生活を営む中国人)経営の中華レストランのなかで、最もインターネット時代に合った組織的取り組みを敢行した先駆者だと思う。

 デリバリーでピンチをチャンスに変えようと努力した同店は、最近、六本木にある老華僑(70年代後半以前から中国国外にいる中国人)経営の高級中華レストランの経営権を買い取った。経営困難で撤退や倒産するレストランが多い中で、敢えて積極路線を打ち出したのだ。その作戦が奏功するかどうか、この結論が出るには、まだまだ時間が必要だが、電光石火のごとく下した経営決断には、目を見張るものがあった。

 逆境に活路を探し求める東京の中華レストランは、これまで見下されがちだった外売ビジネスに、新しいビジネスチャンスを見出している。外売に対する本気度の違いが、ひょっとすると東京の中華レストランの明暗を分けるかもしれない。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)