盗んだ家畜を日本国外に持ち出すことや、正規の流通経路に乗せることはほぼ不可能なので、「闇ルート」でさばくしかない。報道では、丸焼き用として子豚の取引を持ちかける不審なSNSアカウントもいくつか確認されているらしい。

「外国人の犯行」だけでは
説明がつかない

 という話を聞くと、「ほら、どうせ豚の丸焼きを食べる習慣のある中国人か、ベトナム人の仕業でしょ」という人たちも多いだろう。確かに、このような大胆不敵な窃盗事件に、外国人が絡んでいるケースは少なくない。実際、8月28日に福岡県筑後市で、畑に立ち入ってシシトウやピーマンなどをビニール袋に詰めて持ち去ろうとしていたところを現行犯逮捕されたのも、自称中国籍の女性2人。近くの果樹園では、ブドウやナシが盗まれる被害も報告されているという。

 ただ、この問題が複雑なのは、「そういうことをするのは外国人」ということだけで説明がつかない点だ。今年2月、京都で逮捕された2人の無職男性は、ラーメンの具材として人気の「九条ネギ」を約300キロ、15万円相当盗んで、専門業者に売りさばいていた。また、同じ月に香川県で農家の畑に忍び込んでキャベツを盗んだのは、近くのタマネギ農家の男(45)だった。報道によれば、男は「お金にするためにやった」という。

 もうお分かりだろう。確かに、農作物や家畜を盗む不届きな外国人も世の中には存在しているが、同じことをやっている日本人もかなりたくさん存在している。しかし、なぜか野菜・家畜泥棒と聞くと、「外国人が怪しいんじゃない?」と真っ先に疑われる。客観的なデータからではなく、あくまでイメージで「容疑者」にされてしまうのだ。

 このあたりの不思議な現象は、「強盗」に置き換えるとわかりやすい。コンビニや住居に押し入るという「侵入強盗」は、「不良外国人が増えて治安が悪くなった」という主張の根拠となるエピソードとしてよく使われるが、実はデータを見ると、外国人による強盗は言うほど発生していない。

 警察庁の『平成30年の刑法犯に関する統計資料』によれば、2018年のコンビニや店舗、住宅への「侵入強盗」の検挙数は498件。一方、「来日外国人」による「侵入強盗」の検挙数はというと、15件である。つまり、世の中で起きているコンビニ強盗や住居への押し込み強盗などは、大多数が日本人によって引き起こされているのだ。

 しかし、世間は外国人による犯行がかなり多いと思っているので、そのイメージを悪用する輩まで出てきている。2018年7月にコンビニ強盗をして逮捕された無職の男は、犯行の際にわざと片言の日本語を喋って、外国人による犯行を装ったのだ。