9月になり航空機の乗客が新型コロナウイルス感染拡大の防止として要請されたマスク着用を拒否し、退去させられたというニュースが相次いで報じられた。いずれのトラブルも共通点は男性の乗客が客室乗務員の声に一切耳を傾けず、理由の説明を求めても拒否。結局、運航責任者(機長)から降りるよう命令されたという顛末(てんまつ)だ。そして、これも共通しているのがトラブルになった後、マスク着用に身体的な問題があると主張し、航空会社の対応は不当と非難している点だ。果たして、退去させられた乗客の訴えに道理はあるのか。航空機事故で関係者を何度か取材した経験から考察してみたい。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
着用も理由説明も拒否
1件目のトラブルがあったのは9月7日午後。北海道の釧路空港から関西空港に向かうピーチ・アビエーション機内で、マスクを着用していなかった30代男性に客室乗務員が求めたが「要請するなら書面を出せ」などと拒否。
出発が約45分遅れた上、飛行中も大声を出すなどして威圧的な姿勢が続き、機長が航空法の安全阻害行為に該当すると判断。新潟空港に緊急着陸し、男性に降りるよう命令書を交付した。
男性は降機に応じ、その後、ピーチ機は関西空港に向けて出発。約2時間15分遅れで到着し、乗客120人に影響が出た。