「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。

なぜ、アマゾンは<br />書籍をインターネットで売るビジネスから<br />始めたのか?Photo: Adobe Stock

自社事業のセンターピンを見つける

 まず一つ目、「どこの市場セグメントから始めるとPMFできそうか」について解説したい。

「パレートの法則(80:20の法則)」を聞いたことはあるだろうか? あらゆるプロダクトやサービスの利用者のうち20%が80%の利用を占める等の、パターンを示した法則だ。

 例えば、アップルのiPhoneは世界中で使われているが、それでも、先進国を中心とした20%のユーザーが、その総取引額の80%を占めているだろう。このように、世の中にどんなにサービスが浸透しようが、80:20の法則に当てはまる。

 こと初期のスタートアップにおいては、全ユーザーの20%が対象でも広すぎる。いわゆる初期ユーザーと言われる「アーリーアダプター」の中でも、さらに切実で積極的にソリューションを求めているユーザーを明確にしていく必要がある。

 極論、スタートアップは20%のうちの20%のうちの20%をアーリーアダプター中のアーリーアダプター(イノベーター)として見つけ、プロダクトを使ってもらい、細かいフィードバックをもらいながら、熱狂的なファンになってもらうことが重要になる。

 私は、これを「ボウリングのセンターピン(一番先頭のピン)」を見つけること、と表現している。センターピンにボールが当たれば、多くのピンを倒すことができるというアナロジーだ。このセンターピンを見つけることが初期のスタートアップの至上命題であると考えている。

 また、「20%の20%の20%」、つまり、全市場の1%にも満たない「センターピン」を見つけた場合、「ニッチで、スケールできないのでは?」と疑問に思う読者がいるかもしれない。

 でも、その心配は無用だ。きちんと「プロダクト/ビジネスモデル軸」と「市場軸」の「ビジネスロードマップ」を描くことによって、スケールするストーリー/ロードマップを描き出すことができるのだ。