酔鯨本社蔵の売店に立つ大倉広邦さん本社蔵の売店に立つ大倉広邦さん Photo by ​Yohko Yamamoto

創業した祖父の思いを引き継ぐ、
ハイエンドな酒造り

 ハイエンドの土佐酒を目指し、新天地で酒蔵をゼロから建てた酔鯨酒造の社長、大倉広邦さん。大手ビール会社を退職し、母方の祖父、窪添竜温さんが創業した酒蔵を35歳で引き継いだ。

 純米吟醸酒に力を入れた竜温さんは、終戦まで陸軍戦闘機のパイロットだった。敵機を落とすたびに師団長が飲ませてくれた酒の品質は最悪で、「戦争が終わったら、うまい酒を造る」と決めて復員。妻の実家の食品会社に入り、酒蔵を買収して創業した。

「酔鯨」の名は幕末の土佐藩主、山内容堂が自ら称した「鯨海酔侯」に由来する。

 祖父の没後、親戚が経営を担うが業績が悪化。「酒蔵を継ぐのは竜温さんの血筋で」と提案があり、ビール会社勤務で地酒専門店で4年間の勤務経験もある孫の広邦さんに白羽の矢が立った。悩みつつも大好きな祖父の遺志を継ぐと決意を固め、家族の反対を押し切って2013年に入社した。