累計38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林 總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』が9月29日にダイヤモンド社から発売になります。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしていきます。登場人物は、林教授と生徒の川村カノンの2人。知識ゼロから始めて、いかにして決算書を読み解くスキルを身につけていくのか? 川村カノンになったつもりで、本連載にお付き合いください。
複式簿記は高等学校で習う高等数学より、
ずっと役に立つ
林教授 東京国際フォーラムの資産が帳簿に載っていなかったのは、単式簿記だからだよ。この事実を初めて問題にしたのが当時の石原慎太郎都知事だった。公認会計士の協力を得て、東京都は複式簿記を取り入れた。その結果、平成10年度の決算書に東京国際フォーラムの建物が1600億円として計上されるようになったんだ。
カノン 単式簿記では、建物などの資産は帳簿に載らないんですね。
林教授 単に、お金を建物に1600億円使ったとだけ記録されるに過ぎない。次のようにね。
平成10年△月×日 支出 建物1600億円
カノン じゃあ、複式簿記は?
林教授 現金を1600億円支払った見返りに1600億円の建物を手に入れた、と記入する。つまり、複式で次のように帳簿に記入するんだ。
平成10年△月×日 建物1600億円/現金1600億円
カノン 単式簿記では現金の支払いが載るだけで、資産が増えたことは帳簿には載らないのですね。
林教授 それだけではない。複式簿記を使えば、1600億円のお金をどうやって調達したかもわかる。銀行からの借金か、地方債を発行したか。そして、今、いくら借金が残っているかも帳簿を見ればわかる。
カノン 複式簿記って、すごいんですね!
林教授 高等学校で習う高等数学より、ずっとためになる。
カノン だからヴェニスの商人には、複式簿記は必須だったんですね。