初めて立件されたのは7月16日。東京都江戸川区で前方の車の通行を妨害する目的で車間距離を詰め、割り込んで停止させたとして、警視庁は道交法違反(あおり運転)容疑で同区に住む会社員の男(42)を書類送検した。
書類送検容疑は改正道交法施行日の6月30日午後5時半ごろ、被害者の車の後方からクラクションを鳴らし続け、交差点で割り込んで停止させた疑い。
警視庁はドラレコを解析し、男が車間距離を約4.5メートルまで詰め、約700メートルにわたってクラクションを鳴らしパッシングもしていたため、あおり運転と断定した。
男は被害者の車を停止させた後、車から降りて被害者に「何であおってるんだ」と怒鳴り、近くの通行人が110番。調べに対し「被害者の車に後方から車間距離を詰められたと思い、かっとなった」と容疑を認めているという。
男はこの日が改正道交法施行日とは知らず、同乗者は「男はこれまでにも何度かあおり運転をしていた」と説明しているらしい。
共通する子どもじみた動機
初めて逮捕状が執行されたのは8月18日。大分県警は、道交法違反(あおり運転、著しい危険)の疑いで同県日出町の派遣社員三浦貴正容疑者(46)を逮捕した。
逮捕容疑は7月10日午後10時ごろ、別府市の国道10号で男性会社員の車に後方から急接近。約2.8キロにわたって十分な車間距離を取らず、クラクションを執拗(しつよう)に鳴らし続けて進行を妨害した上、車を接触させた疑いだ。
三浦被告(9月8日起訴済み)はこの直後、男性の肩や首をつかんで引っ張り「庖丁で刺すぞ」などと脅したとして暴行と脅迫で既に逮捕・起訴されている。
ほかにも、(1)8月6日、岡山県警がトラック運転手の男(50代)、(2)9月9日、北海道警が無職の男(53)、(3)同15日、山形県警が無職の男(44)、(4)同23日、群馬県警がトラック運転手の男(66)、(5)同24日、広島県警が土木作業員の男(52)、(6)同28日、兵庫県警が中学教諭の男(40代)――をそれぞれ書類送検と、筆者が調べただけでこれだけある(年齢はいずれも当時)。
(1)の事件では「追い越されて腹が立ち、抜き返そうと強引に割り込んだ」、(2)は「後続車に車間を詰められ注意しようと思った」、(3)(6)は「クラクションを鳴らされ腹が立った」、(4)は「前に割り込まれ腹が立った」、とそれぞれ供述。
(5)の事件は「妨害運転はしていない」と容疑を否認しているが、パトカーから逃走しようとして信号無視をしたり急ブレーキをかけて衝突させたりしたとされ、所持品からは覚醒剤が見つかり逮捕、起訴されている。
宮崎被告や前述の事件でも共通しているのが「やられたからやり返そうとした」という、まことにばかばかしく、つまらない、子どもじみた感情が動機であるという点だ。