そして、最初は小さなマーケットであっても、その分野で認知度が高まり、権威者になりパーソナルブランドを確立する事ができれば、そのブランドを武器に徐々にマーケットを広げていくことも可能になります。
ここで誤解のないようにしたいこととして、「ひとつ」に絞り込むという意味は、いままで行ってきた仕事の、絞り込んだ分野以外を今すぐに全て捨てるということではないということです。ニッチな分野で、ブランドを確立していくにあたり、今あるベースを捨てていきなり絞り込むことは勇気のいることですし、とても危険です。
自分自身のパーソナルブランドが確立できる分野を決めて、この分野には時間とお金をある程度投資します。そして、最初はそれと今まで行ってきた仕事を同時並行に行うのです。次に、パーソナルブランドが確立できた段階と認識した時点で、徐々に比重を確立した分野に移していくことがポイントです。
さて、このプロセスを実際の事例で見てみましょう。今回ご紹介する方は、大手メーカーの営業職から独立し、「ECOホールディングス」を立ち上げた小森一史さんです。独立して7年目、事業がようやく軌道に乗り始めた昨年、東日本大震災と原発事故が起こりました。市場に電力の安定供給や電気料金上昇の不安が広がったことで、小森さんは、経営危機に追い込まれました。
このような苦しい状況下、自分を見失わず、自分自身の強みである特定の分野に拘り続けることで、その分野のことなら私が一番、という形でパーソナルブランドの確立を目指しました。
その結果、現在は毎日問い合わせが後を絶たない程、事業を盛り返したということです。
点在するエンドユーザーより
地域密着の代理店にターゲットを絞る
小森一史さんは現在、太陽光発電パネル設置を低価格に抑える神戸発の新技術を、全国の施工代理店に広める仕事に従事しています。この技術のカナメである特殊な金具のメーカーのいわば営業部門のような形です。
中小企業や地域商店街などで、電力不足や電気料金値上げへの対応策として、また売電事業として、太陽光発電システムを導入しようとする動きが全国的に広がっています。
とはいえ10KWの発電能力を備えようとするとその初期費用は500万~700万円といいますから、投資として小さな額ではありません。そこに、設置コストを3割も下げる新技術が現れました。NPO法人ワット神戸という神戸の技術系企業の集まりが、知恵と技術を結集して開発したものです。