屋上や陸屋根など平らなところに太陽光発電パネルを設置する場合、従来は、屋上や屋根に穴を空けて架台を固定し、その上にパネルを取り付けていました。それを、設置場所に市販のコンクリートを置いて、金具でパネルとつなぐ方式にしたのです。置くだけなので設置工事につきものだった防水工事が不になり、移動も簡単。パネルの傾斜角度は5度で、風速40Mの風に耐える安全性があります。このアイディアのカギは、パネルとコンクリートをつなぐ金具にありました。
小森さんが、この金具メーカーの営業部門を任されたのは2011年秋のことでした。
2011年まで小森さんは、IHクッキングヒーターを使って料理を実演し、それをサービスしながらオール電化普及を進める、その世界の名物講師でした。
まさに「オール電化普及の伝道師、小森さん」というパーソナルブランドを築いていたのです。
最初は大手メーカーの営業職、その後、独立して7年にわたり活躍されていました。そのようにして、ようやく事業が安定したところで東日本大震災が起こりました。
オール電化普及の伝道師として活躍していた小森さんにとっては、大きな試練が訪れます。
ご存知のようにオール電化とは家庭内のエネルギーを全て電気でまかなうものであり、それによって光熱費が安くなるメリットがありました。しかし、東日本大震災と、それに伴う原発事故による電力供給不足の高まりにより、オール電化普及事業にとっては逆風が吹くことになりました。
危機感を持った小森さんはこの時、太陽光発電の会社に営業部長として再就職しました。しかし経営者と意見が合わず3ヵ月半で退職。ところがその会社から派遣された3日間の社外研修会で知り合った人が、今の事業への道を開いてくれたのですから、運はどこにあるかわかりません。
小森さんはオール電化の普及活動の時に、BtoBとBtoCの両方のセミナー講師を務めていました。その経験から、太陽光発電パネル設置の新技術は、施工業者にターゲットを絞って営業するべきだと判断しました。商品は太陽光発電システムのみであり、爆発的大衆消費が望めるものではありません。神戸の金具メーカーがエンドユーザーにアプローチするのは遠すぎると考えたのです。