2012~19年における
実質雇用者報酬の増加率

実質雇用者報酬の増加率出所:内閣府「国民経済計算」

 菅義偉内閣が発足した。これを機に、7年8カ月続いた安倍内閣の経済運営への評価が各方面で行われている。その中で、家計は実質賃金が低下して豊かにならなかったとの指摘があるが、統計データを詳しく見ると実態は大きく異なる。

 厚生労働省「毎月勤労統計」に見る雇用者1人あたりの実質賃金は2012~19年で4.4%低下した。これは非正規雇用者の割合が上昇し、長時間労働の是正も進展して、労働時間が減少したためだ。企業は労働生産性を高め、雇用を同時期に500万人近く増やしつつ、長時間労働者の業務の見直しや分担を進めた。また世帯主が勤める企業の家族手当などを意識して、パートタイマーの配偶者が就業調整したことも一因である。